風力発電の仕組み|メリット・デメリットも合わせて解説

風力発電の仕組み|メリット・デメリットも合わせて解説

再生可能エネルギーのひとつとして注目を集めている風力発電。その漢字から、風を利用して発電する方法だとはわかっていても、実際の仕組みやメリットについて知らない人も多いのではないでしょうか。この記事では、風力発電の仕組みに加え、メリットやデメリット、日本国内外の取り組みについて解説します。

風力発電とは?

風力発電とは、風の力で発電する方法です。街中や平野などに、大きな風車のような建造物を見たことがある人も多いのではないでしょうか。誰もが一度は見たことがある、大きな風車のような建造物が、風力で電気を作り出す風力発電設備です。

もう少し詳しく説明すると、風力発電は風車のプロペラ部分が風の力で動くことで発電します。風力発電設備の中には、発電機に加えて増速機や可変ピッチ機構、方位制御機構が取り付けられています。ちなみに、風車のプロペラ部分はブレードと呼ばれます。

風車が発電するときは、風をブレードに最大限伝えるため「可変ピッチ機構」でプロペラの角度を変え、「方位制御機構」を使用してプロペラの方角を変えます。さらに「増速機」を活用することで、プロペラの回転をサポートし、発電できる速度までブレードを回すことも可能です。ブレードが風の力で動き出したら、その動きが発電機に伝わり、発電が開始されます。

風力発電とは? 

風力発電が必要とされる理由

近年は、地球温暖化が深刻化しており、世界中でCO2排出量の削減への取り組みが行われています。地球温暖化は、気温上昇や異常気象などを引き起こす現象です。2023年には、世界の平均気温が史上最高となったことを受け、国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化」という言葉を使って話題になりました。

異常気象発生地域分布図

地球温暖化や地球沸騰化の進行を抑制するために必要なのが、CO2排出量の削減です。CO2の排出量を削減するためには、私たちが普段使用している電気などのCO2排出を抑えなければいけません。電気のCO2排出量を抑えられることで注目されているのが「再生可能エネルギー」です。再生可能エネルギーは、自然の力で発電することができる方法を指しています。風力発電は、再生可能エネルギーの一種で、CO2を排出しない環境にやさしい発電方法です。

日本では、電気の発電の多くを火力発電で行っています。2024年5月の火力発電割合は65.1%と最も多いです。火力発電は、化石燃料や天然ガスを燃やすことで発電を行う方法で、多くのCO2を排出します。CO2の排出量を減らすためにも、火力発電から風力発電などの再生可能エネルギーに移行することが求められています。

風力発電のメリットとデメリット

CO2を排出しない風力発電ですが、メリットだけではなくデメリットやリスクがあります。風力発電を普及させ、再生可能エネルギーを今よりも活用するためには、デメリットやリスクの克服が必要になるでしょう。

風力発電のメリット

風力発電のメリットは、以下の3つです。とくに、風車を建てることができれば、どこでも発電ができる点は風力発電の最大のメリットだと言えるでしょう。

  • CO2を排出しない
  • 昼夜発電できる
  • 山や海上でも発電できる
  • エネルギー変換効率がいい

風力発電は、他の発電方法に比べてエネルギー変換効率が高いです。変換効率とは、発電の元となるエネルギーを電気に変換できる力のことを指します。近年、一般住宅で導入されることが多い太陽光発電の変換効率は、約20%だと言われています。対して、風力発電の変換効率は30%から40%です。バイオマス発電などの変換効率も約20%程度なので、風力発電は他の発電方法に比べて少ないエネルギーで電気を多く発電できることがわかります。

風力発電のデメリット

風力発電は、風の力を使って電気を作るので、風がない場所では発電できません。風が少ない場所や弱い場所には、設置が向いていない点が風力発電のデメリットだと言えるでしょう。風力発電のデメリットは、以下のとおりです。

  • 風がないと発電できない
  • 経年劣化や落雷、雨風などで壊れる可能性がある
  • 騒音が出る可能性がある

風力発電の風車を見たことがある方は、設備が大きくて驚いた方も多いのではないでしょうか。風力発電の設備は、近くで見ると意外と大きいです。その大きさゆえ、プロペラが回るときには音が出ます。発電時に音が出るので、騒音が起きると影響がある住宅街や街中は、風力発電に向いていません。

風力発電のリスク

風力発電には、大きい設備ゆえのリスクがあります。具体的には以下の5つです。

  • プロペラについた雪が落下する
  • 破損した部品が落ちてくる
  • 施工に時間がかかる
  • 台風や落雷による故障
  • 地震や液状化による倒壊

風力発電は、屋外に建てられており、天候や環境の影響を受けてしまいます。とくに、風力発電は高さがあるので、落雷の影響が大きく出てしまう点もリスクとして挙げられます。また、プロペラに溜まった雪が落下したり、劣化した部品が落下したりするリスクも考えられます。

今後、風力発電を普及させていくためには、風力発電を安全に活用する方法を見つけなければいけません。雪や部品の落下があるため、人が入らない場所に設備を導入するなどの安全面を守る対策が必要になるでしょう。

風力発電活用への取り組み

風力発電は、太陽光発電や水力発電などと同様に、世界中で注目を集めています。日本国内でも、風力発電の導入量は増えており、CO2の削減に役立っています。世界でも、風力発電の導入量は増えており、日本国内外でさまざまな取り組みが行われています。

日本の取り組み

日本政府は、再生可能エネルギー使用の割合を増やすため、風力発電の普及にも取り組んでいます。2023年に導入された風力発電は、廃止分を差し引いて86基で、2022年よりも多い数の風力発電設備が導入されました。日本政府が掲げている風力発電の導入目標は、2030年時点で5.7GWです。2024年3月時点での不足分は0.6GWです。2030年までに0.6GWの風力発電が導入できれば、目標を達成できる形になります。

風力発電は、地域に根ざした事業が可能になる「地域産業」です。風力発電を導入する地域に向け、風力発電業者はさまざまな取り組みを行っています。例えば、地域の子供たちを風力発電設備の中へ案内し、風力発電への理解を深めるなどです。ほかには、地元住民と苔を活用した事業を開始したり、地元の機材を利用した校舎の改修や、木材を育成したりなどの活動を行っています。

世界の取り組み

日本だけではなく、世界でも風力発電設備が多く導入されています。2022年には、世界全体で906GWの風力発電が導入されました。906GWのうち、49 %は中国で導入された風力発電です。次に米国(13.00%)、ブラジル(5.24%)と続きます。他の国に比べて、中国がずば抜けて風力発電を導入していることがわかります。

中国は再生可能エネルギーの活用に力を入れている国のひとつです。2022年末には、再生可能エネルギーのシェア率(47.3%)が、石炭による発電のシェア率(44%)を超えました。風力発電も中国の再生可能エネルギー活用に役立っているエネルギー源のひとつで、風力発電以外にも太陽光発電や水力発電が積極的に導入されています。

まとめ

風力発電は、環境にいい再生可能エネルギーとして国内外で活用されています。今後も、風力発電の導入数は世界的に増えると予想されています。CO2を排出せずに発電できる風力発電は、太陽光発電や水力発電などに並んで、主要なエネルギー源のひとつになっていくでしょう。

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再生可能エネルギーのひとつとして注目を集めている風力発電。その漢字から、風を利用して発電する方法だとはわかっていても、実際の仕組みやメリットについて知らない人も多いのではないでしょうか。この記事では、風力発電の仕組みに加え、メリットやデメリット、日本国内外の取り組みについて解説します。

風力発電とは?

風力発電とは、風の力で発電する方法です。街中や平野などに、大きな風車のような建造物を見たことがある人も多いのではないでしょうか。誰もが一度は見たことがある、大きな風車のような建造物が、風力で電気を作り出す風力発電設備です。

もう少し詳しく説明すると、風力発電は風車のプロペラ部分が風の力で動くことで発電します。風力発電設備の中には、発電機に加えて増速機や可変ピッチ機構、方位制御機構が取り付けられています。ちなみに、風車のプロペラ部分はブレードと呼ばれます。

風車が発電するときは、風をブレードに最大限伝えるため「可変ピッチ機構」でプロペラの角度を変え、「方位制御機構」を使用してプロペラの方角を変えます。さらに「増速機」を活用することで、プロペラの回転をサポートし、発電できる速度までブレードを回すことも可能です。ブレードが風の力で動き出したら、その動きが発電機に伝わり、発電が開始されます。

風力発電とは? 

風力発電が必要とされる理由

近年は、地球温暖化が深刻化しており、世界中でCO2排出量の削減への取り組みが行われています。地球温暖化は、気温上昇や異常気象などを引き起こす現象です。2023年には、世界の平均気温が史上最高となったことを受け、国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化」という言葉を使って話題になりました。

異常気象発生地域分布図

地球温暖化や地球沸騰化の進行を抑制するために必要なのが、CO2排出量の削減です。CO2の排出量を削減するためには、私たちが普段使用している電気などのCO2排出を抑えなければいけません。電気のCO2排出量を抑えられることで注目されているのが「再生可能エネルギー」です。再生可能エネルギーは、自然の力で発電することができる方法を指しています。風力発電は、再生可能エネルギーの一種で、CO2を排出しない環境にやさしい発電方法です。

日本では、電気の発電の多くを火力発電で行っています。2024年5月の火力発電割合は65.1%と最も多いです。火力発電は、化石燃料や天然ガスを燃やすことで発電を行う方法で、多くのCO2を排出します。CO2の排出量を減らすためにも、火力発電から風力発電などの再生可能エネルギーに移行することが求められています。

風力発電のメリットとデメリット

CO2を排出しない風力発電ですが、メリットだけではなくデメリットやリスクがあります。風力発電を普及させ、再生可能エネルギーを今よりも活用するためには、デメリットやリスクの克服が必要になるでしょう。

風力発電のメリット

風力発電のメリットは、以下の3つです。とくに、風車を建てることができれば、どこでも発電ができる点は風力発電の最大のメリットだと言えるでしょう。

  • CO2を排出しない
  • 昼夜発電できる
  • 山や海上でも発電できる
  • エネルギー変換効率がいい

風力発電は、他の発電方法に比べてエネルギー変換効率が高いです。変換効率とは、発電の元となるエネルギーを電気に変換できる力のことを指します。近年、一般住宅で導入されることが多い太陽光発電の変換効率は、約20%だと言われています。対して、風力発電の変換効率は30%から40%です。バイオマス発電などの変換効率も約20%程度なので、風力発電は他の発電方法に比べて少ないエネルギーで電気を多く発電できることがわかります。

風力発電のデメリット

風力発電は、風の力を使って電気を作るので、風がない場所では発電できません。風が少ない場所や弱い場所には、設置が向いていない点が風力発電のデメリットだと言えるでしょう。風力発電のデメリットは、以下のとおりです。

  • 風がないと発電できない
  • 経年劣化や落雷、雨風などで壊れる可能性がある
  • 騒音が出る可能性がある

風力発電の風車を見たことがある方は、設備が大きくて驚いた方も多いのではないでしょうか。風力発電の設備は、近くで見ると意外と大きいです。その大きさゆえ、プロペラが回るときには音が出ます。発電時に音が出るので、騒音が起きると影響がある住宅街や街中は、風力発電に向いていません。

風力発電のリスク

風力発電には、大きい設備ゆえのリスクがあります。具体的には以下の5つです。

  • プロペラについた雪が落下する
  • 破損した部品が落ちてくる
  • 施工に時間がかかる
  • 台風や落雷による故障
  • 地震や液状化による倒壊

風力発電は、屋外に建てられており、天候や環境の影響を受けてしまいます。とくに、風力発電は高さがあるので、落雷の影響が大きく出てしまう点もリスクとして挙げられます。また、プロペラに溜まった雪が落下したり、劣化した部品が落下したりするリスクも考えられます。

今後、風力発電を普及させていくためには、風力発電を安全に活用する方法を見つけなければいけません。雪や部品の落下があるため、人が入らない場所に設備を導入するなどの安全面を守る対策が必要になるでしょう。

風力発電活用への取り組み

風力発電は、太陽光発電や水力発電などと同様に、世界中で注目を集めています。日本国内でも、風力発電の導入量は増えており、CO2の削減に役立っています。世界でも、風力発電の導入量は増えており、日本国内外でさまざまな取り組みが行われています。

日本の取り組み

日本政府は、再生可能エネルギー使用の割合を増やすため、風力発電の普及にも取り組んでいます。2023年に導入された風力発電は、廃止分を差し引いて86基で、2022年よりも多い数の風力発電設備が導入されました。日本政府が掲げている風力発電の導入目標は、2030年時点で5.7GWです。2024年3月時点での不足分は0.6GWです。2030年までに0.6GWの風力発電が導入できれば、目標を達成できる形になります。

風力発電は、地域に根ざした事業が可能になる「地域産業」です。風力発電を導入する地域に向け、風力発電業者はさまざまな取り組みを行っています。例えば、地域の子供たちを風力発電設備の中へ案内し、風力発電への理解を深めるなどです。ほかには、地元住民と苔を活用した事業を開始したり、地元の機材を利用した校舎の改修や、木材を育成したりなどの活動を行っています。

世界の取り組み

日本だけではなく、世界でも風力発電設備が多く導入されています。2022年には、世界全体で906GWの風力発電が導入されました。906GWのうち、49 %は中国で導入された風力発電です。次に米国(13.00%)、ブラジル(5.24%)と続きます。他の国に比べて、中国がずば抜けて風力発電を導入していることがわかります。

中国は再生可能エネルギーの活用に力を入れている国のひとつです。2022年末には、再生可能エネルギーのシェア率(47.3%)が、石炭による発電のシェア率(44%)を超えました。風力発電も中国の再生可能エネルギー活用に役立っているエネルギー源のひとつで、風力発電以外にも太陽光発電や水力発電が積極的に導入されています。

まとめ

風力発電は、環境にいい再生可能エネルギーとして国内外で活用されています。今後も、風力発電の導入数は世界的に増えると予想されています。CO2を排出せずに発電できる風力発電は、太陽光発電や水力発電などに並んで、主要なエネルギー源のひとつになっていくでしょう。

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