太陽光発電の仕組みを図で解説!メリット・デメリットを比較
世界の国々で導入が進んでいる太陽光発電、日本でも住宅の屋根に設置している太陽光パネル(ソーラーパネル)を見かけることが多くなっています。電気料金の高騰や自然災害対策として、また脱炭素化社会の形成など、生活場面だけでなく公共、産業全般を含む広い場面で導入が進んでいます。ここでは太陽光発発電システムの仕組みやメリット・デメリット、新しいビジネスモデルとして注目を集めるPPAなどについて解説をします。
なお太陽光発電は、英語のPhotovoltaicを略してPVシステム と表記されることがあります。
目次
太陽光発電とは
太陽光発電はCO2フリー電気
太陽光発電とは、光エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる太陽電池による発電です。太陽電池にはシリコン系や化合物系、有機系などの種類があり、光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する機能を持つ半導体のひとつです。太陽電池は一般の電池のように蓄電はできませんが、石油系や石炭系の発電設備と異なり発電時にCO2を発生しません。そのため太陽光発電は、クリーンなCO2フリー電気を提供することができます。
太陽光発電の仕組み/太陽電池の構造図
太陽光発電システムは、「セル」と呼ばれる光電変換機能を持つ太陽電池を板状につないだ太陽電池モジュール(ソーラーパネル)と、パワーコンディショナ、電力量計、発電量モニタ、蓄電池などの付帯機器から構成されています。蓄電池は、オーナーそれぞれの必要性に応じたオプション装備となります。家庭用と産業用とでは、メインとなる機器は共通していますが、発電容量の規模が異なるため付帯機器の種類と機能に違いが見られます。
太陽光発電システムの構成/家庭用
参考:(一社)太陽光発電協会
運用システム
太陽光発電の運用システムには、独立システムと系統連系システムがあります。太陽光発電協会の用語集によれば、前者は商用電力系統から独立して電力供給する太陽光発電システム、後者は商用電力系統に接続し電力の送出し及び受取りを行う太陽光発電システムとしています。商用電力系統とは、電力会社の送電ネットワークを指します。
太陽光発電の発展経緯
欧州から始まった太陽光発電の広がり
太陽光発電は、脱炭素化社会の形成を目指す先進地域である欧州から始まっています。その普及拡大の契機は、2000年にドイツでスタートしたFIT(固定価格買取)制度です。太陽光発電システムで発電した電力を、電力事業者が固定価格で買取る制度です。電力市況を上回る価格が設定され、欧州全域で太陽光発電が急速に普及しました。その動きが世界に波及し、特に中国は国策として太陽光発電に注力しており、2015年以降は導入設備容量、発電電力量においてもトップの座を維持しています。なお日本は、発電電力量において世界第3位のランクとなっています。
参考:IEA PVPS Snapshot 2023をもとに自然エネルギー財団が作成
日本の動向
わが国でも2012年にFIT制度を導入し、直近の10年で発電量は14倍にまで拡大しています。再エネ中に占める太陽光発電の比率は、2010年の1%未満から2022年は約10%近くにまで拡大しています。FIT制度の導入と同時に、カーボンニュートラルに向けた企業や生活者の意識変革も大きく影響していると見られています。
わが国の太陽光発電量
参考:総合エネルギー統計(1990~2022年度確報)
世界でFITからFIPへ施策転換が進む
太陽光発電は世界的に発電量を拡大していますが、導入支援制度の移行が見られます。FIT
制度の導入で太陽光発電を大きく伸ばしたドイツでしたが、2016年以降は大型設備(100kW超)で発電した電力はFIP(フィードインプレミアム)制度へ移行することになりましたFIP制度への移行理由は、FIT制度を維持するための国民が負担する「賦課金」が増大したためです。
FIP制度は入札によるプレミアム価格がインセンティブとなり、FIT制度で国民が負担する「賦課金」を軽減するために導入されました。わが国でも、2020年にFIP制度がスタートしています。わが国の場合は「賦課金」の軽減に加え、将来に向けた再エネ市場と一般の電力市場の統合に向けた試みでもあるとしています。
太陽光発電システム導入のメリット・デメリット
太陽光発電システムは、CO2削減という地球環境の改善に大きなメリットをもたします。さらに当該システムは地球環境だけでなく、生活や産業活動にとっても利便性や経済性の面で様々なメリットをもたらしてくれます。反面、デメリットも想定されます。
太陽光発電システムがもたらすメリット
- 自家消費で電気代を節約、電力料金が高騰しても影響が小さい
- 余剰電力の販売で、収入が得られる
- 太陽光発電システム導入の補助金制度が利用できる(多くの県で実施)
- 災害などの停電時でも太陽光発電は稼働
- 屋根に設置した太陽電池モジュール(パネル)は冷暖の遮熱効果がある
- EVの充電やエコキュート(空気中の熱でお湯を沸かす電気温水器)など、電気代の節約
- CO2フリー電気で地球環境への貢献
太陽光発電システムがもたらすデメリット
- 補助制度を利用しても設置費用負担が大きい
- 法定義務による定期的なメンテナンス経費
- 発電量は天気に左右される
- 日照や建物の強度などによる制約
- 反射光トラブルが発生する場合がある
- 発電容量により撤去及び処分に関わる保険料の負担がある
ここまでは家庭用の太陽光発電システムのメリットとデメリットを解説しました。公共や産業分野におけるメリット・デメリットも、根本的な部分は共通した事項になると考えられます。
これからの国と企業の取り組み
太陽光発電システムの普及を拡大するための課題として、「卒FIT」対策と新たな太陽光発電システムの魅力づくりがあげられます。
卒FITはエネルギー関連事業者のビジネスチャンス
「卒FIT」とはFIT制度の適用期間が終了する当該システムのオーナーを表すネーミングです。卒FITになると固定価格での余剰電力の販売が終了し、オーナーは余剰電力の活用方法の検討が必要になります。その対策として次のような方策が想定されています。
①ガソリン車をEVに変える、ガス給湯器をエコキュートなど、余剰電量でエネルギー自給自足を促進。(EVや省エネ電気機器の需要増加)
②定置型蓄電池の代わりにV2Hを導入、EVやPHVの多目的利用を図る(蓄電池関連需要の増加)
③余剰電力は、新電力事業者へ相対ビジネスとして販売。(新電力会社の潜在顧客が拡大)
なお産業用ユーザーにおいても、FIT制度の適用期間(20年)が経過すれば、同様な選択に迫られることになります。
新たな太陽光発電システムの魅力づくり
新たな太陽光発電システムの魅力づくりとして、国の新しい太陽光発電事事業モデルへの支援が始まっています。
PPAの展開
PPA(Power Purchase Agreement)とは、企業や自治体が保有する施設建物や遊休地などスペースを発電事業者に提供、発電電事業者が自己負担で太陽光設備を設置し運営を担います。スペースを提供する企業や自治体が電力の需要家となり、発電事業者に電気料金を支払うというビジネスモデルです。
PPAモデルでは、需要家は設備投資、運営とメンテナンス経費を負担することなく、電気料金の支払いだけで再エネ電力が使用できます。言い換えれば、初期費用0で、クリーンエネルギーの導入が可能になるというモデルです。初期費用を必要としないというメリットから、PPAモデルの導入企業が急増しています。
国が支援するPPAモデル事例
PPAモデルは、新たな太陽光発電システムの魅力づくりとして国の支援が始まっています。
2021年度から,資源エネルギー庁の補助事業「需要家主導型太陽光発電導入支援事業」で、発電設備と同時に「再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業」も並行して実施されています。
参考:一般社団法人太陽光発電協会からのお知らせ
採択された事例の詳細が、JPEA太陽光発電推進センターのHPで公開されています
https://jp-pc-info.jp/promotion/subsidy.html
家庭用でもPPAモデルを採用
PPAモデルは公共や産業分野だけでなく、家庭分野でも導入が始まっています。電力会社やガス会社などが発電事業者となり、一般家庭の屋根に太陽光発電を設置してPPAモデルを運用する仕組みです。家庭用PPAモデルでは、契約期間終了後は設置した太陽光発電設備を無償で譲渡されるというメリットもあります。
まとめ
脱炭素化社会の実現のために、FIP制度の導入など国の主導で太陽光発電システムは急速に普及して来ました。今後もカーボンニュートラルに向けて、当該システムのさらなる普及拡大が期待されています。太陽光発電は「スマートハウス」や「スマートコミュニティ」形成においても重要性を増してきています。
参考記事
太陽光発電の仕組みを図で解説!メリット・デメリットを比較
世界の国々で導入が進んでいる太陽光発電、日本でも住宅の屋根に設置している太陽光パネル(ソーラーパネル)を見かけることが多くなっています。電気料金の高騰や自然災害対策として、また脱炭素化社会の形成など、生活場面だけでなく公共、産業全般を含む広い場面で導入が進んでいます。ここでは太陽光発発電システムの仕組みやメリット・デメリット、新しいビジネスモデルとして注目を集めるPPAなどについて解説をします。
なお太陽光発電は、英語のPhotovoltaicを略してPVシステム と表記されることがあります。
目次
太陽光発電とは
太陽光発電はCO2フリー電気
太陽光発電とは、光エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる太陽電池による発電です。太陽電池にはシリコン系や化合物系、有機系などの種類があり、光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する機能を持つ半導体のひとつです。太陽電池は一般の電池のように蓄電はできませんが、石油系や石炭系の発電設備と異なり発電時にCO2を発生しません。そのため太陽光発電は、クリーンなCO2フリー電気を提供することができます。
太陽光発電の仕組み/太陽電池の構造図
太陽光発電システムは、「セル」と呼ばれる光電変換機能を持つ太陽電池を板状につないだ太陽電池モジュール(ソーラーパネル)と、パワーコンディショナ、電力量計、発電量モニタ、蓄電池などの付帯機器から構成されています。蓄電池は、オーナーそれぞれの必要性に応じたオプション装備となります。家庭用と産業用とでは、メインとなる機器は共通していますが、発電容量の規模が異なるため付帯機器の種類と機能に違いが見られます。
太陽光発電システムの構成/家庭用
参考:(一社)太陽光発電協会
運用システム
太陽光発電の運用システムには、独立システムと系統連系システムがあります。太陽光発電協会の用語集によれば、前者は商用電力系統から独立して電力供給する太陽光発電システム、後者は商用電力系統に接続し電力の送出し及び受取りを行う太陽光発電システムとしています。商用電力系統とは、電力会社の送電ネットワークを指します。
太陽光発電の発展経緯
欧州から始まった太陽光発電の広がり
太陽光発電は、脱炭素化社会の形成を目指す先進地域である欧州から始まっています。その普及拡大の契機は、2000年にドイツでスタートしたFIT(固定価格買取)制度です。太陽光発電システムで発電した電力を、電力事業者が固定価格で買取る制度です。電力市況を上回る価格が設定され、欧州全域で太陽光発電が急速に普及しました。その動きが世界に波及し、特に中国は国策として太陽光発電に注力しており、2015年以降は導入設備容量、発電電力量においてもトップの座を維持しています。なお日本は、発電電力量において世界第3位のランクとなっています。
参考:IEA PVPS Snapshot 2023をもとに自然エネルギー財団が作成
日本の動向
わが国でも2012年にFIT制度を導入し、直近の10年で発電量は14倍にまで拡大しています。再エネ中に占める太陽光発電の比率は、2010年の1%未満から2022年は約10%近くにまで拡大しています。FIT制度の導入と同時に、カーボンニュートラルに向けた企業や生活者の意識変革も大きく影響していると見られています。
わが国の太陽光発電量
参考:総合エネルギー統計(1990~2022年度確報)
世界でFITからFIPへ施策転換が進む
太陽光発電は世界的に発電量を拡大していますが、導入支援制度の移行が見られます。FIT
制度の導入で太陽光発電を大きく伸ばしたドイツでしたが、2016年以降は大型設備(100kW超)で発電した電力はFIP(フィードインプレミアム)制度へ移行することになりましたFIP制度への移行理由は、FIT制度を維持するための国民が負担する「賦課金」が増大したためです。
FIP制度は入札によるプレミアム価格がインセンティブとなり、FIT制度で国民が負担する「賦課金」を軽減するために導入されました。わが国でも、2020年にFIP制度がスタートしています。わが国の場合は「賦課金」の軽減に加え、将来に向けた再エネ市場と一般の電力市場の統合に向けた試みでもあるとしています。
太陽光発電システム導入のメリット・デメリット
太陽光発電システムは、CO2削減という地球環境の改善に大きなメリットをもたします。さらに当該システムは地球環境だけでなく、生活や産業活動にとっても利便性や経済性の面で様々なメリットをもたらしてくれます。反面、デメリットも想定されます。
太陽光発電システムがもたらすメリット
- 自家消費で電気代を節約、電力料金が高騰しても影響が小さい
- 余剰電力の販売で、収入が得られる
- 太陽光発電システム導入の補助金制度が利用できる(多くの県で実施)
- 災害などの停電時でも太陽光発電は稼働
- 屋根に設置した太陽電池モジュール(パネル)は冷暖の遮熱効果がある
- EVの充電やエコキュート(空気中の熱でお湯を沸かす電気温水器)など、電気代の節約
- CO2フリー電気で地球環境への貢献
太陽光発電システムがもたらすデメリット
- 補助制度を利用しても設置費用負担が大きい
- 法定義務による定期的なメンテナンス経費
- 発電量は天気に左右される
- 日照や建物の強度などによる制約
- 反射光トラブルが発生する場合がある
- 発電容量により撤去及び処分に関わる保険料の負担がある
ここまでは家庭用の太陽光発電システムのメリットとデメリットを解説しました。公共や産業分野におけるメリット・デメリットも、根本的な部分は共通した事項になると考えられます。
これからの国と企業の取り組み
太陽光発電システムの普及を拡大するための課題として、「卒FIT」対策と新たな太陽光発電システムの魅力づくりがあげられます。
卒FITはエネルギー関連事業者のビジネスチャンス
「卒FIT」とはFIT制度の適用期間が終了する当該システムのオーナーを表すネーミングです。卒FITになると固定価格での余剰電力の販売が終了し、オーナーは余剰電力の活用方法の検討が必要になります。その対策として次のような方策が想定されています。
①ガソリン車をEVに変える、ガス給湯器をエコキュートなど、余剰電量でエネルギー自給自足を促進。(EVや省エネ電気機器の需要増加)
②定置型蓄電池の代わりにV2Hを導入、EVやPHVの多目的利用を図る(蓄電池関連需要の増加)
③余剰電力は、新電力事業者へ相対ビジネスとして販売。(新電力会社の潜在顧客が拡大)
なお産業用ユーザーにおいても、FIT制度の適用期間(20年)が経過すれば、同様な選択に迫られることになります。
新たな太陽光発電システムの魅力づくり
新たな太陽光発電システムの魅力づくりとして、国の新しい太陽光発電事事業モデルへの支援が始まっています。
PPAの展開
PPA(Power Purchase Agreement)とは、企業や自治体が保有する施設建物や遊休地などスペースを発電事業者に提供、発電電事業者が自己負担で太陽光設備を設置し運営を担います。スペースを提供する企業や自治体が電力の需要家となり、発電事業者に電気料金を支払うというビジネスモデルです。
PPAモデルでは、需要家は設備投資、運営とメンテナンス経費を負担することなく、電気料金の支払いだけで再エネ電力が使用できます。言い換えれば、初期費用0で、クリーンエネルギーの導入が可能になるというモデルです。初期費用を必要としないというメリットから、PPAモデルの導入企業が急増しています。
国が支援するPPAモデル事例
PPAモデルは、新たな太陽光発電システムの魅力づくりとして国の支援が始まっています。
2021年度から,資源エネルギー庁の補助事業「需要家主導型太陽光発電導入支援事業」で、発電設備と同時に「再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業」も並行して実施されています。
参考:一般社団法人太陽光発電協会からのお知らせ
採択された事例の詳細が、JPEA太陽光発電推進センターのHPで公開されています
https://jp-pc-info.jp/promotion/subsidy.html
家庭用でもPPAモデルを採用
PPAモデルは公共や産業分野だけでなく、家庭分野でも導入が始まっています。電力会社やガス会社などが発電事業者となり、一般家庭の屋根に太陽光発電を設置してPPAモデルを運用する仕組みです。家庭用PPAモデルでは、契約期間終了後は設置した太陽光発電設備を無償で譲渡されるというメリットもあります。
まとめ
脱炭素化社会の実現のために、FIP制度の導入など国の主導で太陽光発電システムは急速に普及して来ました。今後もカーボンニュートラルに向けて、当該システムのさらなる普及拡大が期待されています。太陽光発電は「スマートハウス」や「スマートコミュニティ」形成においても重要性を増してきています。
参考記事