未来を創るエコ経営?「ネイチャーポジティブ」の実践事例で探る“できること”

未来を創るエコ経営?「ネイチャーポジティブ」の実践事例で探る“できること”

ネイチャーポジティブは、生物多様性が失われていく状況を止めて、回復軌道へ乗せていくことを指しています。現在、野生生物種は、過去1,000万年間の平均と比較して10倍~100倍もの速度で減少しています。

そこで既存の自然環境保全だけでなく、経済や社会、政治、技術といった分野も含めて改善し、自然を豊かにしていく必要があります。このような考え方や取り組みが、ネイチャーポジティブです。

しかし、具体的に何が行われているのか、国や企業に求められていることは何かわからない方も多いかと思います。

本記事ではネイチャーポジティブとは何か、企業にとって必要な理由、海外や日本の事例を詳しく解説します。

ネイチャーポジティブとは

ネイチャーポジティブとは、日本語で自然再興と呼びます。意味は、生態系を回復軌道へ乗せていくための取り組み、考え方などを指しています。

現在、野生生物種の減少が急速に進んでおり、生物多様性が急速に失われています。

生物多様性が失われていくと、空気、食料、水など私たちの生活に必要な資源・環境(自然資本)にも大きな影響を与えてしまいます。

私たちの社会、経済を持続させていくためには、自然・生物多様性を改善しなければいけません。

そこで2021年のG7サミットで採択された「2030年自然協約」では、ネイチャーポジティブについて宣言され、さまざまな取り組みも始まっています。

ネイチャーポジティブの取り組みが重要な理由

ネイチャーポジティブは、私たちの生活を保つためにも必要な考え方です。

生活を維持するためには、食料や水、土壌などといった資源が必須です。また、このような資源は、生物多様性の維持によって保たれています。

つまり、生物多様性が失わてしまうと、これまでのような生活を維持できない可能性も出てきます。

そのため、ネイチャーポジティブの考え方を取り入れた取り組みは、私たちの生活を守る上でも重要です。

ネイチャーポジティブに関する海外の取り組み事例

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、国際的なプロジェクトのひとつです。

具体的には、企業が自然のリスクなどを評価し、かつ情報を公開するための枠組みを提供するプロジェクトや組織を指します。自然環境の保全に資金を活用していくよう促していくことが、主な目的です。

TNFDに沿って情報を開示した企業には、積水ハウスやみずほフィナンシャルグループ、キリンホールディングスといった日本の大手企業も含まれています。

参考:TNFDとは?TCFDとの違いも含めてわかりやすく簡単に解説 | グリラボ

ネイチャーポジティブに関する日本の取り組み事例

日本では、世界的なネイチャーポジティブの流れに合わせ、2022年3月に「ネイチャーポジティブ経済研究会」を設置しました。2023年に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」では、2030年までにネイチャーポジティブ達成という目標を掲げ、5つの基本戦略を定めています。

国では企業に対してネイチャーポジティブ経営を実施してもらうため、ネイチャーポジティブ経済移行戦略を策定・公開しました。

ネイチャーポジティブ経済移行戦略では、ネイチャーポジティブ経営による価値向上のプロセスや具体例、実施にあたって何を押さえるべきか、国のバックアップなどについて記載されているのが特徴です。

参考:ネイチャーポジティブ経済移行戦略の公表について | 報道発表資料 | 環境省

ネイチャーポジティブに関する企業の取り組み事例

以下では、ネイチャーポジティブに関する企業の取り組み事例を紹介します。

花王

花王では、事業活動による生物多様性への影響を抑えるため、さまざまな取り組みを進めています。

たとえば、主要な原材料とされているパーム油、紙、パルプの原産地で、森林破壊が進まないよう代替技術の開発を行っています。ほかには、渇水リスクを抱える地域でも衣料用液体洗剤を利用できるよう、少ない水で洗浄できる洗剤の開発も進めています。

参考:生物多様性に対する取り組み

参考:ネイチャーポジティブとは?背景や目的、企業の取り組み事例についてわかりやすく解説! – サステナビリティNavi

積水ハウス

積水ハウスでは、2001年から5本の樹計画という植栽活動を進めています。5本の樹計画は、主に地域の在来樹種を全国で植栽する活動で、これまでに1,709万本植えられました。

また、植栽活動によって在来樹種の種類が増えており、自然資本の回復につながっています。

参考:ネイチャー・ポジティブ方法論 | 積水ハウスの「5本の樹」計画 | 積水ハウス

ロッテ

ロッテでは、自社や子会社の生産拠点周辺で生物多様性のリスクや水リスクの評価を行ないながら、生物多様性への影響を抑える取り組みを進めています。

また、環境への適切な対応ができるよう、社内で環境教育や情報共有も実施されています。

参考:事業活動から生じる環境負荷の継続的な低減への取り組み

キリンホールディングス

キリンホールディングスは、持続可能な生物資源の活用に取り組んでいます。例えば、スリランカの紅茶農園では、野生生物保護のための教育資金援助や、農薬・肥料の使用を抑えつつ収量を増やす方法の指導を行っています。

ほかには小農園の認証取得支援を行っており、累計5,350の農園に向けてトレーニングを継続しています。

参考:生物資源の取り組み | 環境 | キリンホールディングス

参考:ネイチャーポジティブとは|企業に求められる対応と国内事例をわかりやすく解説 | 自然電力の脱炭素支援サービス – 自然電力グループ

企業に求められるネイチャーポジティブ

企業のサプライチェーンや事業活動は、水や生物、土壌といった自然資本に依存しています。そのため、ネイチャーポジティブ経営は、事業活動を継続していく上でも欠かせない取り組みです。

また、植栽活動などといったネイチャーポジティブは、地域社会と良好な関係を築けるほか、ESG(環境・社会・企業統治に関する評価基準)に関する評価や自社の信頼性向上につながります。

ネイチャーポジティブ経営へ取り組む場合は、以下のステップで進めていきましょう。

  1. 事業活動と自然資本の関係性を分析する
  2. 戦略や方針を決めた上で、具体的な目標などを設定し実施計画を決める
  3. 計画を実施
  4. 実施した内容を評価し、計画の修正や見直しを図る

各ステップを進めていく際は、サプライヤー(事業活動に必要な製品や部品、サービスを提供している事業者)と適宜連携し、必要に応じて対応していくことが大切です。

参考:生物多様性民間参画ガイドライン

まとめ:ネイチャーポジティブは私たちにとって必要な取り組み

ネイチャーポジティブは、生物多様性が失われていく状況を止めて、回復軌道へ乗せていくための取り組み、考え方などを指しています。企業は自然資本に依存しており、自然・生物多様性の損失による影響を受けます。事業活動を進めていく際は、ネイチャーポジティブを取り入れることが大切です。

環境問題への取り組みについて関心を寄せている方、環境に配慮された経営について調べている事業者などは、今回の記事を参考にしながらネイチャーポジティブへ取り組んでみてはいかがでしょうか。

参考:ネイチャーポジティブ | ecojin(エコジン):環境省

参考:ネイチャーポジティブとは?

参考:ネイチャーポジティブとは・意味 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

参考:ネイチャーポジティブとは|企業に求められる対応と国内事例をわかりやすく解説 | 自然電力の脱炭素支援サービス – 自然電力グループ

参考:ネイチャーポジティブとは?概要や取り組み事例を詳しく解説!

Categoryカテゴリー

Keyword注目キーワード

未来を創るエコ経営?「ネイチャーポジティブ」の実践事例で探る“できること”

未来を創るエコ経営?「ネイチャーポジティブ」の実践事例で探る“できること”

ネイチャーポジティブは、生物多様性が失われていく状況を止めて、回復軌道へ乗せていくことを指しています。現在、野生生物種は、過去1,000万年間の平均と比較して10倍~100倍もの速度で減少しています。

そこで既存の自然環境保全だけでなく、経済や社会、政治、技術といった分野も含めて改善し、自然を豊かにしていく必要があります。このような考え方や取り組みが、ネイチャーポジティブです。

しかし、具体的に何が行われているのか、国や企業に求められていることは何かわからない方も多いかと思います。

本記事ではネイチャーポジティブとは何か、企業にとって必要な理由、海外や日本の事例を詳しく解説します。

ネイチャーポジティブとは

ネイチャーポジティブとは、日本語で自然再興と呼びます。意味は、生態系を回復軌道へ乗せていくための取り組み、考え方などを指しています。

現在、野生生物種の減少が急速に進んでおり、生物多様性が急速に失われています。

生物多様性が失われていくと、空気、食料、水など私たちの生活に必要な資源・環境(自然資本)にも大きな影響を与えてしまいます。

私たちの社会、経済を持続させていくためには、自然・生物多様性を改善しなければいけません。

そこで2021年のG7サミットで採択された「2030年自然協約」では、ネイチャーポジティブについて宣言され、さまざまな取り組みも始まっています。

ネイチャーポジティブの取り組みが重要な理由

ネイチャーポジティブは、私たちの生活を保つためにも必要な考え方です。

生活を維持するためには、食料や水、土壌などといった資源が必須です。また、このような資源は、生物多様性の維持によって保たれています。

つまり、生物多様性が失わてしまうと、これまでのような生活を維持できない可能性も出てきます。

そのため、ネイチャーポジティブの考え方を取り入れた取り組みは、私たちの生活を守る上でも重要です。

ネイチャーポジティブに関する海外の取り組み事例

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、国際的なプロジェクトのひとつです。

具体的には、企業が自然のリスクなどを評価し、かつ情報を公開するための枠組みを提供するプロジェクトや組織を指します。自然環境の保全に資金を活用していくよう促していくことが、主な目的です。

TNFDに沿って情報を開示した企業には、積水ハウスやみずほフィナンシャルグループ、キリンホールディングスといった日本の大手企業も含まれています。

参考:TNFDとは?TCFDとの違いも含めてわかりやすく簡単に解説 | グリラボ

ネイチャーポジティブに関する日本の取り組み事例

日本では、世界的なネイチャーポジティブの流れに合わせ、2022年3月に「ネイチャーポジティブ経済研究会」を設置しました。2023年に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」では、2030年までにネイチャーポジティブ達成という目標を掲げ、5つの基本戦略を定めています。

国では企業に対してネイチャーポジティブ経営を実施してもらうため、ネイチャーポジティブ経済移行戦略を策定・公開しました。

ネイチャーポジティブ経済移行戦略では、ネイチャーポジティブ経営による価値向上のプロセスや具体例、実施にあたって何を押さえるべきか、国のバックアップなどについて記載されているのが特徴です。

参考:ネイチャーポジティブ経済移行戦略の公表について | 報道発表資料 | 環境省

ネイチャーポジティブに関する企業の取り組み事例

以下では、ネイチャーポジティブに関する企業の取り組み事例を紹介します。

花王

花王では、事業活動による生物多様性への影響を抑えるため、さまざまな取り組みを進めています。

たとえば、主要な原材料とされているパーム油、紙、パルプの原産地で、森林破壊が進まないよう代替技術の開発を行っています。ほかには、渇水リスクを抱える地域でも衣料用液体洗剤を利用できるよう、少ない水で洗浄できる洗剤の開発も進めています。

参考:生物多様性に対する取り組み

参考:ネイチャーポジティブとは?背景や目的、企業の取り組み事例についてわかりやすく解説! – サステナビリティNavi

積水ハウス

積水ハウスでは、2001年から5本の樹計画という植栽活動を進めています。5本の樹計画は、主に地域の在来樹種を全国で植栽する活動で、これまでに1,709万本植えられました。

また、植栽活動によって在来樹種の種類が増えており、自然資本の回復につながっています。

参考:ネイチャー・ポジティブ方法論 | 積水ハウスの「5本の樹」計画 | 積水ハウス

ロッテ

ロッテでは、自社や子会社の生産拠点周辺で生物多様性のリスクや水リスクの評価を行ないながら、生物多様性への影響を抑える取り組みを進めています。

また、環境への適切な対応ができるよう、社内で環境教育や情報共有も実施されています。

参考:事業活動から生じる環境負荷の継続的な低減への取り組み

キリンホールディングス

キリンホールディングスは、持続可能な生物資源の活用に取り組んでいます。例えば、スリランカの紅茶農園では、野生生物保護のための教育資金援助や、農薬・肥料の使用を抑えつつ収量を増やす方法の指導を行っています。

ほかには小農園の認証取得支援を行っており、累計5,350の農園に向けてトレーニングを継続しています。

参考:生物資源の取り組み | 環境 | キリンホールディングス

参考:ネイチャーポジティブとは|企業に求められる対応と国内事例をわかりやすく解説 | 自然電力の脱炭素支援サービス – 自然電力グループ

企業に求められるネイチャーポジティブ

企業のサプライチェーンや事業活動は、水や生物、土壌といった自然資本に依存しています。そのため、ネイチャーポジティブ経営は、事業活動を継続していく上でも欠かせない取り組みです。

また、植栽活動などといったネイチャーポジティブは、地域社会と良好な関係を築けるほか、ESG(環境・社会・企業統治に関する評価基準)に関する評価や自社の信頼性向上につながります。

ネイチャーポジティブ経営へ取り組む場合は、以下のステップで進めていきましょう。

  1. 事業活動と自然資本の関係性を分析する
  2. 戦略や方針を決めた上で、具体的な目標などを設定し実施計画を決める
  3. 計画を実施
  4. 実施した内容を評価し、計画の修正や見直しを図る

各ステップを進めていく際は、サプライヤー(事業活動に必要な製品や部品、サービスを提供している事業者)と適宜連携し、必要に応じて対応していくことが大切です。

参考:生物多様性民間参画ガイドライン

まとめ:ネイチャーポジティブは私たちにとって必要な取り組み

ネイチャーポジティブは、生物多様性が失われていく状況を止めて、回復軌道へ乗せていくための取り組み、考え方などを指しています。企業は自然資本に依存しており、自然・生物多様性の損失による影響を受けます。事業活動を進めていく際は、ネイチャーポジティブを取り入れることが大切です。

環境問題への取り組みについて関心を寄せている方、環境に配慮された経営について調べている事業者などは、今回の記事を参考にしながらネイチャーポジティブへ取り組んでみてはいかがでしょうか。

参考:ネイチャーポジティブ | ecojin(エコジン):環境省

参考:ネイチャーポジティブとは?

参考:ネイチャーポジティブとは・意味 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

参考:ネイチャーポジティブとは|企業に求められる対応と国内事例をわかりやすく解説 | 自然電力の脱炭素支援サービス – 自然電力グループ

参考:ネイチャーポジティブとは?概要や取り組み事例を詳しく解説!

Categoryカテゴリー

Keyword注目キーワード