グリーンウォッシングとは?日本企業の事例を紹介!ECで規制された理由も解説
環境意識の高まりとともに「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」などが商品やサービスの価値を高める言葉として広く使われるようになりました。
しかし、科学的な裏付けが十分に取れていないにもかかわらず「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」と標榜することは「見せかけの環境配慮=グリーンウォッシング(グリーンウォッシュ)」だと消費者や投資家から指摘されかねません。
グリーンウォッシングに対する規制を強化しているEUに商品を輸出する場合は、特に注意する必要があります。
本記事では「グリーンウォッシング」とは何かについて、概念やEUでの規制、日本企業の事例を通して紹介します。
目次
グリーンウォッシングとは、実際より過大な環境配慮を示唆すること
グリーンウォッシングとは商品やサービス、事業などについて「実際よりも過大に環境に配慮していると示唆すること」です。
「見せかけの環境配慮」と言われることもあります。
グリーンウォッシングは、企業の広告やブランド戦略などにおいて一般消費者に対する欺瞞として批判され、EUやアメリカで規制当局により指摘される事例が増加しています。
日本においても、消費者庁から商品の表示に関して措置命令が実施された事例があります。
グリーンウォッシングは、グリーン・ファイナンス市場が拡大する金融業界においても見逃せない問題です。
環境省は、グリーンボンドに関わるグリーンウォッシングを以下のように定義しています。
「実際は環境改善効果がない、または、調達資金が適正に環境事業に充当されていないにもかかわらず、グリーンボンドと称すること」
グリーンウォッシングは、一般消費者向けの広告や表示と金融市場、2つの側面から問題とされています。
グリーン経済の成長とグリーンウォッシュ事例の増加の相関関係
参考:日本版 グリーンウォッシュとその回避方法: アジア金融業界向け入門ガイド|ClientEarth
グリーンウォッシングは、市場の公正性や信頼を損なう
グリーンウォッシングの問題点として、以下の4点が挙げられます。
- 脱炭素社会への移行が遅れる:実際に環境課題に対してプラスの取り組みをしていない企業が利益を得ることは、脱炭素社会の実現を遅らせることになります。
- 市場の公正性、正確性を損なう:見せかけだけの環境配慮をしている企業とコストを負担して真摯に環境課題に取り組んでいる企業が混在しているのは、市場の公正性が損なわれた状態です。
- 誠実にグリーン事業を行っている企業の競争力を損なう:グリーンウォッシング企業に利益が流れると、グリーン事業に取り組んでいる企業が受け取るはずの利益が損なわれます。
- グリーン商品への信頼を損なう:グリーンウォッシングが放置されると、業界や商品、サービス全体の環境改善に向けた効果が疑われるようになります。
グリーンウォッシングの問題点は、消費者向けの商品やサービスだけでなく、機関投資家や投資家向けの金融市場においても同じように危険視されます。
グリーンウォッシングと消費者保護に係る国内外での規制
グリーンウォッシングに対して国内外で規制される事例が増えています。
消費者保護の観点から特に先進的な取り組みを進めているのが、EUです。
また、日本でも消費者庁がグリーンウォッシングにあたる環境表示に対して措置命令が実施されました。
以下ではEUと日本のグリーンウォッシングに係る規制について紹介します。
消費者保護の先進的取り組み、EUのグリーンウォッシングを禁止する指令
2024年2月にEU理事会はグリーンウォッシングを禁止する指令を正式に採択しました。
この指令は発行後、2年以内にEU各国で国内法制化することを義務付けられています。
規制される事項として挙げられるのは以下のとおりです。
- 環境性能を実証できない限り「環境にやさしい」「カーボンフレンドリー」「エコ」「生分解性」などと主張することを禁止
- 独立した第三者機関による等の認証制度に基づかない持続可能性ラベルの使用禁止
- カーボンオフセットのみに基づいて、製品等を環境に中立またはプラスと主張することの禁止
- 明確、実証可能、かつ第三者機関によって検証されない限り、将来の環境主張は禁止(例えば、当社は〜年までに脱炭素を実現する会社だと主張するなど)
環境主張の広告に証拠提出を求める、EUのグリーンクレーム指令
前述のグリーンウォッシングを禁止する指令を補完するものとして、グリーンクレーム指令が2024年3月に欧州議会により採択されました。
グリーンクレーム指令は環境主張の広告を出す前に、証拠提出を企業に義務付けるものです。
今後の審議によって内容の変更がありうるものの、環境アセスメントの実施や第三者機関による検証の必要性や環境情報の開示要件、ラベル制度などが盛り込まれる見込みです。
EUが採択した規制は、EUに製品を輸出している日本企業にも直接影響を与えます。
規制をもとにグリーンウォッシングに関する訴訟が増加することも予想されています。
日本の消費者庁等によるグリーンウォッシング規制の事例
グリーンウォッシングに対する規制当局の措置命令は、EUや英国、アメリカなどだけで実施されてるわけではありません。
日本でも2022年に消費者庁により「完全生分解性プラスチック」などと表示されたゴミ袋・レジ袋の販売会社等に対して、措置命令が実施されました。
参考:ゴミ袋及びレジ袋の販売事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について|消費者庁
これは環境負荷低減効果を、実証データの裏付けなく主張した商品グリーンウォッシュの事例と言えます。
また、2023年にはアンモニア混焼石炭火力発電について「「CO2が出ない火」による発電」と表示したことについて、グリーンウォッシングにあたるとして日本広告審査機構(JARO)に申立がなされました。
事実を誤認させるような環境表示や、ライフサイクル全体ではなく一部分のみを取り出した点、ファクトチェックが行われていない点等が問題となりました。
グリーンウォッシングに関して企業が気をつけるべきこと
グリーンウォッシングを規制する法的根拠は、各国や経済圏における既存の法律や規制に基づきます。
例として、不当表示法や過失虚偽表示、消費者保護法、広告規制法、株主訴訟、市場開示規制、競争法などが挙げられます。
国内だけでなく国外でもグリーンウォッシングに対する規制は強まっており、実際に上記を元に法的手段がとられた事例も増えつつある状況です。
企業だけでなく、取締役に対する訴訟や、金融市場の場合は機関投資家などグリーンウォッシング企業に投資した側も責任を問われる事例もあります。
いったんグリーンウォッシングと指摘されると、社会的な評判が落ちるだけでなく企業の管理体制や企業価値が疑われることになりかねません。
自社の環境主張に対しては事前に精査するほか、グリーンウォッシングとの指摘を受けた場合の事後対応も想定できれば、より高いリスク管理につながります。
グリーンウォッシングと批判を受けないために
事実に基づかない表現や誤解させるような記載だけがグリーンウォッシングと批判されるのではありません。
金融業界でのグリーンウォッシングを定義した「グリーンウォッシュとその回避方法: アジア金融業界向け入門ガイド|ClientEarth」では、以下のように書かれています。
「グリーンウォッシュは、故意の有無に関係なく行われうるとの考えが広く受け入れられています。」
知らなかったではすまされない状況になっているのです。
グリーンウォッシングと批判されないためには、以下の点に気をつけることが重要です。
- 自社の環境に関する主張や情報が正確か調査すること
- 環境目標に誠実に取り組み、透明性を確保すること
- 自社に関わる分野や国等における、環境に関する規制や事例に注意を払うこと
- 企業活動だけでなく、投資家やステークホルダーに対する義務や責任の範囲を把握すること
脱炭素社会、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが加速するなかで、適切に企業活動ができるよう、グリーンウォッシングを恐れすぎることなく、グリーン事業を推進していくことが求められています。
参考記事
グリーンウォッシングとは?日本企業の事例を紹介!ECで規制された理由も解説
環境意識の高まりとともに「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」などが商品やサービスの価値を高める言葉として広く使われるようになりました。
しかし、科学的な裏付けが十分に取れていないにもかかわらず「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」と標榜することは「見せかけの環境配慮=グリーンウォッシング(グリーンウォッシュ)」だと消費者や投資家から指摘されかねません。
グリーンウォッシングに対する規制を強化しているEUに商品を輸出する場合は、特に注意する必要があります。
本記事では「グリーンウォッシング」とは何かについて、概念やEUでの規制、日本企業の事例を通して紹介します。
目次
グリーンウォッシングとは、実際より過大な環境配慮を示唆すること
グリーンウォッシングとは商品やサービス、事業などについて「実際よりも過大に環境に配慮していると示唆すること」です。
「見せかけの環境配慮」と言われることもあります。
グリーンウォッシングは、企業の広告やブランド戦略などにおいて一般消費者に対する欺瞞として批判され、EUやアメリカで規制当局により指摘される事例が増加しています。
日本においても、消費者庁から商品の表示に関して措置命令が実施された事例があります。
グリーンウォッシングは、グリーン・ファイナンス市場が拡大する金融業界においても見逃せない問題です。
環境省は、グリーンボンドに関わるグリーンウォッシングを以下のように定義しています。
「実際は環境改善効果がない、または、調達資金が適正に環境事業に充当されていないにもかかわらず、グリーンボンドと称すること」
グリーンウォッシングは、一般消費者向けの広告や表示と金融市場、2つの側面から問題とされています。
グリーン経済の成長とグリーンウォッシュ事例の増加の相関関係
参考:日本版 グリーンウォッシュとその回避方法: アジア金融業界向け入門ガイド|ClientEarth
グリーンウォッシングは、市場の公正性や信頼を損なう
グリーンウォッシングの問題点として、以下の4点が挙げられます。
- 脱炭素社会への移行が遅れる:実際に環境課題に対してプラスの取り組みをしていない企業が利益を得ることは、脱炭素社会の実現を遅らせることになります。
- 市場の公正性、正確性を損なう:見せかけだけの環境配慮をしている企業とコストを負担して真摯に環境課題に取り組んでいる企業が混在しているのは、市場の公正性が損なわれた状態です。
- 誠実にグリーン事業を行っている企業の競争力を損なう:グリーンウォッシング企業に利益が流れると、グリーン事業に取り組んでいる企業が受け取るはずの利益が損なわれます。
- グリーン商品への信頼を損なう:グリーンウォッシングが放置されると、業界や商品、サービス全体の環境改善に向けた効果が疑われるようになります。
グリーンウォッシングの問題点は、消費者向けの商品やサービスだけでなく、機関投資家や投資家向けの金融市場においても同じように危険視されます。
グリーンウォッシングと消費者保護に係る国内外での規制
グリーンウォッシングに対して国内外で規制される事例が増えています。
消費者保護の観点から特に先進的な取り組みを進めているのが、EUです。
また、日本でも消費者庁がグリーンウォッシングにあたる環境表示に対して措置命令が実施されました。
以下ではEUと日本のグリーンウォッシングに係る規制について紹介します。
消費者保護の先進的取り組み、EUのグリーンウォッシングを禁止する指令
2024年2月にEU理事会はグリーンウォッシングを禁止する指令を正式に採択しました。
この指令は発行後、2年以内にEU各国で国内法制化することを義務付けられています。
規制される事項として挙げられるのは以下のとおりです。
- 環境性能を実証できない限り「環境にやさしい」「カーボンフレンドリー」「エコ」「生分解性」などと主張することを禁止
- 独立した第三者機関による等の認証制度に基づかない持続可能性ラベルの使用禁止
- カーボンオフセットのみに基づいて、製品等を環境に中立またはプラスと主張することの禁止
- 明確、実証可能、かつ第三者機関によって検証されない限り、将来の環境主張は禁止(例えば、当社は〜年までに脱炭素を実現する会社だと主張するなど)
環境主張の広告に証拠提出を求める、EUのグリーンクレーム指令
前述のグリーンウォッシングを禁止する指令を補完するものとして、グリーンクレーム指令が2024年3月に欧州議会により採択されました。
グリーンクレーム指令は環境主張の広告を出す前に、証拠提出を企業に義務付けるものです。
今後の審議によって内容の変更がありうるものの、環境アセスメントの実施や第三者機関による検証の必要性や環境情報の開示要件、ラベル制度などが盛り込まれる見込みです。
EUが採択した規制は、EUに製品を輸出している日本企業にも直接影響を与えます。
規制をもとにグリーンウォッシングに関する訴訟が増加することも予想されています。
日本の消費者庁等によるグリーンウォッシング規制の事例
グリーンウォッシングに対する規制当局の措置命令は、EUや英国、アメリカなどだけで実施されてるわけではありません。
日本でも2022年に消費者庁により「完全生分解性プラスチック」などと表示されたゴミ袋・レジ袋の販売会社等に対して、措置命令が実施されました。
参考:ゴミ袋及びレジ袋の販売事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について|消費者庁
これは環境負荷低減効果を、実証データの裏付けなく主張した商品グリーンウォッシュの事例と言えます。
また、2023年にはアンモニア混焼石炭火力発電について「「CO2が出ない火」による発電」と表示したことについて、グリーンウォッシングにあたるとして日本広告審査機構(JARO)に申立がなされました。
事実を誤認させるような環境表示や、ライフサイクル全体ではなく一部分のみを取り出した点、ファクトチェックが行われていない点等が問題となりました。
グリーンウォッシングに関して企業が気をつけるべきこと
グリーンウォッシングを規制する法的根拠は、各国や経済圏における既存の法律や規制に基づきます。
例として、不当表示法や過失虚偽表示、消費者保護法、広告規制法、株主訴訟、市場開示規制、競争法などが挙げられます。
国内だけでなく国外でもグリーンウォッシングに対する規制は強まっており、実際に上記を元に法的手段がとられた事例も増えつつある状況です。
企業だけでなく、取締役に対する訴訟や、金融市場の場合は機関投資家などグリーンウォッシング企業に投資した側も責任を問われる事例もあります。
いったんグリーンウォッシングと指摘されると、社会的な評判が落ちるだけでなく企業の管理体制や企業価値が疑われることになりかねません。
自社の環境主張に対しては事前に精査するほか、グリーンウォッシングとの指摘を受けた場合の事後対応も想定できれば、より高いリスク管理につながります。
グリーンウォッシングと批判を受けないために
事実に基づかない表現や誤解させるような記載だけがグリーンウォッシングと批判されるのではありません。
金融業界でのグリーンウォッシングを定義した「グリーンウォッシュとその回避方法: アジア金融業界向け入門ガイド|ClientEarth」では、以下のように書かれています。
「グリーンウォッシュは、故意の有無に関係なく行われうるとの考えが広く受け入れられています。」
知らなかったではすまされない状況になっているのです。
グリーンウォッシングと批判されないためには、以下の点に気をつけることが重要です。
- 自社の環境に関する主張や情報が正確か調査すること
- 環境目標に誠実に取り組み、透明性を確保すること
- 自社に関わる分野や国等における、環境に関する規制や事例に注意を払うこと
- 企業活動だけでなく、投資家やステークホルダーに対する義務や責任の範囲を把握すること
脱炭素社会、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが加速するなかで、適切に企業活動ができるよう、グリーンウォッシングを恐れすぎることなく、グリーン事業を推進していくことが求められています。
参考記事