GX（グリーントランスフォーメーション）とは、クリーンエネルギー中心の社会構造へ転換していく取り組みのことです。気候変動問題を解決するためには、化石燃料中心の社会を変える必要があります。そこでGXという考え方が、日本でも重要視されています。

この記事では、GX（グリーントランスフォーメーション）の特徴や求められている背景、カーボンニュートラルとの違いについて解説します。

脱炭素経営に向けてGXの意味を理解しておきたい方などは、ぜひ参考にしてみてください。

GX（グリーントランスフォーメーション）とは？

GX（グリーントランスフォーメーション：Green Transformation）とは、現在の化石燃料を中心とした社会からクリーンエネルギー中心の社会へ転換させる取り組みや変革のことです。

化石燃料は石油や石炭などの燃料を指し、燃焼時に二酸化炭素を含む温室効果ガスを排出します。温室効果ガスは気候変動の原因とされているため、排出量の削減が求められている状況です。そこで、環境負荷の軽減に向けたさまざまな考え方・取り組みが行われています。

中でもGXは、環境負荷を軽減させる取り組みを経済成長につなげる考え方で、カーボンニュートラルなどと異なります。

それでは、GX（グリーントランスフォーメーション）とカーボンニュートラルの違いや注目されている理由を解説します。

GXとカーボンニュートラルの違い

GXとカーボンニュートラルは、経済成長に関する考え方で大きな違いがあります。

一般的にカーボンニュートラルは、二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量実質0を目指す考え方・取り組みを指しています。

たとえば、化石燃料を燃焼させる火力発電から再生可能エネルギー発電設備への転換などが、カーボンニュートラルにつながる取り組みといえます。ただし、カーボンニュートラルに向けた取り組みは、産業構造や社会構造を大きく変化させてしまうほか、経済の成長などについて考慮されていません。

一方、GXには、クリーンエネルギー中心の社会構造へ転換させる活動を通じて、経済の成長を図る考え方が含まれています。つまり、単に温室効果ガスを削減させるのではなく、経済の発展と快適な社会づくりという点を重視しているのが、大きな違いであり特徴です。

GXが注目されている理由

GXは、主に4つの理由から注目されています。

1. 気候変動問題が深刻化している
2. エネルギー供給の問題が発生している
3. 国がGXに取り組み始めた
4. 投資家はESGの視点で企業を評価している

理由のひとつは、気候変動問題の深刻化です。気候変動問題を放置した場合、私たちの社会や生活に大きな影響をおよぼすため、国や企業単位での環境対策が必要とされています。

他には、2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵攻で、原油や石炭、天然ガスなどのエネルギー価格の高騰も起きました。日本はエネルギーを輸入に頼っているため、再生可能エネルギーの活用を含むGXについて注目されています。

また、国では、GXの実現に向けた取り組みとして20兆円規模の先行投資などを行っています。このような動きも企業の注目を集めている理由のひとつです。

国以外にも投資家は、ESG（環境・社会・ガバナンス視点での分析）の観点から企業を評価している傾向です。企業がGXを推進していくことは、投資家からESGのE「環境」に関する評価を高められる可能性もあり、脱炭素経営において重要な項目といえます。

企業がGXへ取り組むメリット

企業にとってGXは、事業の成長や新たなサービスや商品の開発、収益といった点でメリットの大きな取り組みです。主なメリットとして、3つの項目が挙げられます。

• 社会の変化に適応し事業の成長を図れる
• GXを通じた商品開発で収益増加を目指せる
• GX関連の制度で優遇される可能性

続いては、企業がGXへ取り組むメリットを解説していきます。

社会の変化に適応し事業の成長を図れる

GXによる社会の変化に適応しながら事業の成長を図れるのが、企業にとって大きなメリットといえます。

GXの実現へ向けた動きは国単位で起きており、今後大きな変化につながる可能性があります。化石燃料を大量に消費し続ける事業体制では、GXに適応できず自社の評価や信頼性にかかわります。

たとえば、太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入したり再生可能エネルギー由来の電力を調達したりしておけば、二酸化炭素の排出量を削減できるほか、クリーンエネルギーを活用した新たなサービスや制度に対応することが可能です。

GXを通じた商品開発で収益増加を目指せる

GXの視点で社内の省エネ対策や再生可能エネルギー設備の導入、環境負荷に配慮された製品開発を進めていければ、コスト面でメリットにつながります。

省エネ対策を導入した場合は、二酸化炭素の排出削減に加えて、光熱費を含む固定費の削減を図れます。また、省エネに関しては、すぐに始められる内容もあり、多くの企業では取り組みやすい対策でもあります。

オフィスの省エネ対策として挙げられるのは、以下の取り組みです。

• 照明の間引き
• 使用していないエリアの消灯を徹底
• 長時間OA機器を使用しない場合は電源を切る、もしくはスタンバイモードにする
• 空調の設定温度を上げすぎない（冷房の場合は下げすぎない）
• 電気ポットの温度設定を見直す

また、再生可能エネルギーで発電した電気を自家消費（自社で消費）できれば、電力会社からの買電量（電力購入量）および二酸化炭素の削減を見込めます。

他にも環境負荷の少ない製造方法の開発やサービスの提供は、コスト削減だけでなく自社の価値やイメージ向上につながり、収益増加を図れる可能性があります。

GX関連の制度を活用できる可能性

GXに適応した事業活動などを行っている場合は、関連制度を受けられる可能性があります。

たとえば、2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を目指した「GXリーグ」は、企業と官・学共同で取り組みを行ったり交流を図ったりできる場のひとつです。

GXリーグへ参画できれば、さまざまな企業などと意見交換や情報共有を図り、環境負荷の少ない製品やクリーンエネルギーを活用した新サービスの開発に役立てることが可能です。

他にもGXに向けた対策を始める場合は、国の補助金制度を受けられる可能性があります。グリーンイノベーション基金事業という補助事業は、新たな産業を創出する事業など、カーボンニュートラルにつながる事業に対して最長10年間補助金が交付されます。

国によるGX実現へ向けた環境整備や取り組み例

国では、GX実現に向けた環境整備やさまざまな取り組みを行っています。代表的なものとして、GXリーグやGX会議などが挙げられます。

それでは、GXに関する国の取り組みについて確認していきましょう。

GX実行会議

GX実行会議は、内閣総理大臣を議長とした会議で、GX実現に向けた施策について話し合われています。同会議には、エネルギー関連企業や経済団体など、さまざまな有識者が集まっているのも大きな特徴です。

2023年2月、GX実行会議にてGX実現に向けた基本方針が閣議決定され、具体的な方向性なども定められました。また、会議はこれまで9回開催されており、GXの取り組みに関する進捗状況や課題報告、今後の対策などについて議論が交わされています。

GXリーグ

前段でも紹介したようにGXリーグとは、企業と官・学が共同でGXに関するプロジェクトへ取り組んだり新たな市場を創造したりできる場所のことです。

具体的には、排出量取引制度（温室効果ガスの排出枠を取引できる制度）の実践、グリーン市場の創造やビジネス機会創発（スタートアップの連携や支援）、企業間交流の促進などが行われています。

GXの実現に向けた制度や取り組みは加速する

GXの実現に向けた国では、さまざまな支援や制度の設立などを行っています。そのため、企業はGXに対応した事業活動を進めたり脱炭素経営への転換を図ったりしてみることが求められます。

まずはすぐに取り組める省エネ対策から進めていき、徐々に領域を広げてみてはいかがでしょうか。

 

参考記事

• GX（グリーントランスフォーメーション） | 用語解説 | 野村総合研究所(NRI)
• GX（グリーントランスフォーメーション）とは　政府や企業の取り組みを解説：朝日新聞SDGs ACTION!
• GX(グリーントランスフォーメーション)とは？企業の取組事例やビジネスにおける必要性 | DOORS DXGX
• GX(グリーントランスフォーメーション)とは？わかりやすく解説 | GX-PRO Green Transformation | 関西ビジネスインフォメーション株式会社（KBI）
• カーボンニュートラルとは – 脱炭素ポータル｜環境省

 

 

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