エネルギー転換とは?簡単に解説!歴史から学ぶ日本の課題も紹介
エネルギー転換とは?簡単に解説!歴史から学ぶ日本の課題も紹介
エネルギー転換とは従来使用していた燃料源を別のものに変えることを指します。
例えば日本では、第二次世界大戦後に石炭から石油へエネルギー転換が起こりました。
また最近では脱炭素社会、2050年カーボンニュートラルの実現を目指して、CO2排出量が少ない再生可能エネルギーへのエネルギー転換が図られるようになっています。
本記事ではエネルギー転換の概念や流れについて、詳しく解説します。
目次
エネルギー転換とは、従来使用してきた燃料を別のものに変えること
エネルギー転換とは従来使用してきた燃料などのエネルギーを、別のものに変えることを指します。
供給構造そのものの転換となるため、インフラや産業構造、住まいなど広範囲に影響する転換です。
エネルギートランジション、エナジートランジションという言葉が使われることもあります。
2015年パリ協定の採択以降は、世界中で脱炭素社会の実現を目指して、エネルギー転換が図られるようになりました。
具体例として挙げられるのは、再生可能エネルギーの導入や電気自動車の普及です。
特に風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及はめざましく、石油・天然ガスなどの二酸化炭素を多く排出する従来の発電方法からのエネルギー転換が進んでいます。
パリ協定以降、エネルギー転換の主流は再生可能エネルギー
風力・太陽光発電は、技術の進化により経済的合理性を備えるようになり、長期的に見ると運転維持費は天然ガス・石炭火力発電を下回ると言われています。
ただし、太陽光や風力などの再生可能エネルギーのほとんどは天候に左右されるため、現時点で安定的な電力供給を維持するのはむずかしい状況です。
そのためバッテリー技術や再生可能エネルギーに適した送電技術、インフラなど、新しい技術が求められています。
なお、普及が目覚ましい再生可能エネルギーと電気自動車のほか、エネルギー消費自体を削減する技術や製品にも注目が集まっています。
廃棄物のエネルギー利用や二酸化炭素回収技術(CCUS)、スマート輸送技術、ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)なども、省エネの観点から再生エネルギーの安定供給に貢献し、エネルギー転換を後押しする技術です。
EU、中国など、世界各国におけるエネルギー転換の取り組み
2015年パリ協定の採択以降、脱炭素社会の実現を目指して、世界中で急速にエネルギー転換が進んでいます。
以下では、積極的に再生可能エネルギーの普及に取り組んでいるEUのほか、中国やアメリカ、インドなどの取り組みを紹介します。
先駆的な環境政策を掲げるEUにおけるエネルギー転換の取り組み
EUは環境意識が高く、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー転換にも率先して取り組んできました。
近年は脱石炭火力を進めるほか、次世代産業と呼ばれる洋上風力発電や国際送電なども積極的に推進しています。
そんなEUに大きな影響を与えたのが、ロシアのウクライナ侵攻です。
EUは脱石炭を推進する一方で、同じ化石燃料である天然ガスの需要は依然として高く、そのほとんどをロシアに頼っていました。
EUは天然ガスを含めたロシア産の化石燃料への依存度を減らすために、供給源の多様化や天然ガスの貯蔵補充などの対策を模索しています。
アメリカや中国などにおけるエネルギー転換の取り組み
化石燃料の産出国でもあるアメリカは、政権によってエネルギー転換に対する姿勢が変わります。
保守党のトランプ政権はエネルギー転換を積極的に推進しませんでしたが、民主党のバイデン政権は2035年までに100%クリーン電源(太陽光・風力など)を実現するという目標を掲げました。
積極的にエネルギー転換を推進しているのは中国です。
化石燃料を輸入に頼る中国では、エネルギー自給率を高めるために風力発電と太陽光発電を積極的に導入しています。
中国国内では電気自動車も急速に普及しており、電気自動車市場でも存在感を増しています。
一方で世界にはインドのような、発展途上の石炭依存国もあります。
太陽光発電は急速に普及しているものの、多くの人口を抱えるインドが国民の暮らしを支えながら経済成長を続けるには、現在の再生可能エネルギー技術では必要な電力をまかなえません。
それぞれの国の事情に合わせたエネルギー転換が求められています。
日本におけるエネルギー転換の歴史的な課題と取り組み
日本は、燃料の主流が石炭から石油へと変わった1960年代にエネルギー転換を経験しました。
現在は脱炭素社会の実現を目指して、環境に負荷をかけないエネルギーへのエネルギー転換に取り組んでいるところです。
日本におけるエネルギー転換の歴史的課題は、石油依存からの脱却
日本におけるエネルギー転換は1960年代に燃料の主流が石炭から石油へ変わるという形で行われました。
しかし1970年代から1980年代にかけて起こった2度のオイルショックにより、石油に依存したあり方から脱しようと対策が取られるようになったのです。
具体的には、省エネ対策が進み、再生可能エネルギーと原子力、天然ガスなど石油以外の発電方法が模索されました。
特に日本が積極的に推進してきたのは原子力発電です。
しかし、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故により、原子力発電はいったん停止しました。
そして原子力発電が停止した分をまかなうために、CO2排出量が多い火力発電での発電量が増えたのです。
脱炭素社会の実現を目指す、日本のエネルギー転換の取り組み
2020年に政府は、脱炭素社会と2050年カーボンニュートラルの実現を目指すと宣言し、本格的な気候変動対策が始まりました。
2021年度には温室効果ガス排出量の37%が電力部門から排出されており、二酸化炭素排出量ゼロを実現するためには、火力発電所などの脱炭素化と再生可能エネルギーの普及が欠かせません。
また電力部門だけでなく、鉄鉱や化学工業など温室効果ガス高排出産業や自動車や航空、海運などの運輸部門でも、エネルギー転換を進めていく必要があります。
経済産業省は2021年にカーボンニュートラル実現のための中間目標を掲げた「第6次エネルギー基本計画」や同じく2021年に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」によって、脱炭素化の道筋を示してきました。
2023年には「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定し、エネルギー転換については以下のような取り組みを進めると公表しています。
「エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取組を進める」
日本の温室効果ガス排出量の推移
脱炭素社会の実現に向けたエネルギー転換のこれから
エネルギー転換とは、従来使用していた燃料などのエネルギーを別のものに変えることです。
エネルギー転換は、発電方法だけでなく、送電方法やインフラ、エネルギー供給対象のあり方、システム等社会全体に大きな影響を与えます。
2015年のパリ協定採択以降、気候変動対策が急務という共通の認識のもと、脱炭素社会の実現に向けたエネルギー転換が世界各国で行われています。
再生可能エネルギーの普及や安定供給に向けた技術、インフラの整備、システムの開発と実装などは引き続き模索されるでしょう。
また、電力部門や産業・運輸部門において、現時点で二酸化炭素を多く輩出している産業における、化石燃料依存度の段階的な引き下げや、二酸化炭素の貯蔵・回収技術の推進も重要です。
資源エネルギー庁は2024年5月に「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略2024」を策定しました。
非化石エネルギーに関する技術開発や実用化が進めば、日本においても脱炭素社会の実現に向けたエネルギー転換はさらに進むと予想されます。
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エネルギー転換とは?簡単に解説!歴史から学ぶ日本の課題も紹介
エネルギー転換とは?簡単に解説!歴史から学ぶ日本の課題も紹介
エネルギー転換とは従来使用していた燃料源を別のものに変えることを指します。
例えば日本では、第二次世界大戦後に石炭から石油へエネルギー転換が起こりました。
また最近では脱炭素社会、2050年カーボンニュートラルの実現を目指して、CO2排出量が少ない再生可能エネルギーへのエネルギー転換が図られるようになっています。
本記事ではエネルギー転換の概念や流れについて、詳しく解説します。
目次
エネルギー転換とは、従来使用してきた燃料を別のものに変えること
エネルギー転換とは従来使用してきた燃料などのエネルギーを、別のものに変えることを指します。
供給構造そのものの転換となるため、インフラや産業構造、住まいなど広範囲に影響する転換です。
エネルギートランジション、エナジートランジションという言葉が使われることもあります。
2015年パリ協定の採択以降は、世界中で脱炭素社会の実現を目指して、エネルギー転換が図られるようになりました。
具体例として挙げられるのは、再生可能エネルギーの導入や電気自動車の普及です。
特に風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及はめざましく、石油・天然ガスなどの二酸化炭素を多く排出する従来の発電方法からのエネルギー転換が進んでいます。
パリ協定以降、エネルギー転換の主流は再生可能エネルギー
風力・太陽光発電は、技術の進化により経済的合理性を備えるようになり、長期的に見ると運転維持費は天然ガス・石炭火力発電を下回ると言われています。
ただし、太陽光や風力などの再生可能エネルギーのほとんどは天候に左右されるため、現時点で安定的な電力供給を維持するのはむずかしい状況です。
そのためバッテリー技術や再生可能エネルギーに適した送電技術、インフラなど、新しい技術が求められています。
なお、普及が目覚ましい再生可能エネルギーと電気自動車のほか、エネルギー消費自体を削減する技術や製品にも注目が集まっています。
廃棄物のエネルギー利用や二酸化炭素回収技術(CCUS)、スマート輸送技術、ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)なども、省エネの観点から再生エネルギーの安定供給に貢献し、エネルギー転換を後押しする技術です。
EU、中国など、世界各国におけるエネルギー転換の取り組み
2015年パリ協定の採択以降、脱炭素社会の実現を目指して、世界中で急速にエネルギー転換が進んでいます。
以下では、積極的に再生可能エネルギーの普及に取り組んでいるEUのほか、中国やアメリカ、インドなどの取り組みを紹介します。
先駆的な環境政策を掲げるEUにおけるエネルギー転換の取り組み
EUは環境意識が高く、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー転換にも率先して取り組んできました。
近年は脱石炭火力を進めるほか、次世代産業と呼ばれる洋上風力発電や国際送電なども積極的に推進しています。
そんなEUに大きな影響を与えたのが、ロシアのウクライナ侵攻です。
EUは脱石炭を推進する一方で、同じ化石燃料である天然ガスの需要は依然として高く、そのほとんどをロシアに頼っていました。
EUは天然ガスを含めたロシア産の化石燃料への依存度を減らすために、供給源の多様化や天然ガスの貯蔵補充などの対策を模索しています。
アメリカや中国などにおけるエネルギー転換の取り組み
化石燃料の産出国でもあるアメリカは、政権によってエネルギー転換に対する姿勢が変わります。
保守党のトランプ政権はエネルギー転換を積極的に推進しませんでしたが、民主党のバイデン政権は2035年までに100%クリーン電源(太陽光・風力など)を実現するという目標を掲げました。
積極的にエネルギー転換を推進しているのは中国です。
化石燃料を輸入に頼る中国では、エネルギー自給率を高めるために風力発電と太陽光発電を積極的に導入しています。
中国国内では電気自動車も急速に普及しており、電気自動車市場でも存在感を増しています。
一方で世界にはインドのような、発展途上の石炭依存国もあります。
太陽光発電は急速に普及しているものの、多くの人口を抱えるインドが国民の暮らしを支えながら経済成長を続けるには、現在の再生可能エネルギー技術では必要な電力をまかなえません。
それぞれの国の事情に合わせたエネルギー転換が求められています。
日本におけるエネルギー転換の歴史的な課題と取り組み
日本は、燃料の主流が石炭から石油へと変わった1960年代にエネルギー転換を経験しました。
現在は脱炭素社会の実現を目指して、環境に負荷をかけないエネルギーへのエネルギー転換に取り組んでいるところです。
日本におけるエネルギー転換の歴史的課題は、石油依存からの脱却
日本におけるエネルギー転換は1960年代に燃料の主流が石炭から石油へ変わるという形で行われました。
しかし1970年代から1980年代にかけて起こった2度のオイルショックにより、石油に依存したあり方から脱しようと対策が取られるようになったのです。
具体的には、省エネ対策が進み、再生可能エネルギーと原子力、天然ガスなど石油以外の発電方法が模索されました。
特に日本が積極的に推進してきたのは原子力発電です。
しかし、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故により、原子力発電はいったん停止しました。
そして原子力発電が停止した分をまかなうために、CO2排出量が多い火力発電での発電量が増えたのです。
脱炭素社会の実現を目指す、日本のエネルギー転換の取り組み
2020年に政府は、脱炭素社会と2050年カーボンニュートラルの実現を目指すと宣言し、本格的な気候変動対策が始まりました。
2021年度には温室効果ガス排出量の37%が電力部門から排出されており、二酸化炭素排出量ゼロを実現するためには、火力発電所などの脱炭素化と再生可能エネルギーの普及が欠かせません。
また電力部門だけでなく、鉄鉱や化学工業など温室効果ガス高排出産業や自動車や航空、海運などの運輸部門でも、エネルギー転換を進めていく必要があります。
経済産業省は2021年にカーボンニュートラル実現のための中間目標を掲げた「第6次エネルギー基本計画」や同じく2021年に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」によって、脱炭素化の道筋を示してきました。
2023年には「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定し、エネルギー転換については以下のような取り組みを進めると公表しています。
「エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取組を進める」
日本の温室効果ガス排出量の推移
脱炭素社会の実現に向けたエネルギー転換のこれから
エネルギー転換とは、従来使用していた燃料などのエネルギーを別のものに変えることです。
エネルギー転換は、発電方法だけでなく、送電方法やインフラ、エネルギー供給対象のあり方、システム等社会全体に大きな影響を与えます。
2015年のパリ協定採択以降、気候変動対策が急務という共通の認識のもと、脱炭素社会の実現に向けたエネルギー転換が世界各国で行われています。
再生可能エネルギーの普及や安定供給に向けた技術、インフラの整備、システムの開発と実装などは引き続き模索されるでしょう。
また、電力部門や産業・運輸部門において、現時点で二酸化炭素を多く輩出している産業における、化石燃料依存度の段階的な引き下げや、二酸化炭素の貯蔵・回収技術の推進も重要です。
資源エネルギー庁は2024年5月に「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略2024」を策定しました。
非化石エネルギーに関する技術開発や実用化が進めば、日本においても脱炭素社会の実現に向けたエネルギー転換はさらに進むと予想されます。