ESGとは?SDGs・CSRとの違いや投資の種類まで簡単に解説

ESGとは?SDGs・CSRとの違いや投資の種類まで簡単に解説

昨今SDGsとともによく耳にすることがあるESGですが、これからの企業経営においてこの「ESG」はSDGs同様に必要不可欠な観点となります。自然災害が多発するようになり、環境問題がシビアになっていく中で、ESGに取り組む企業は様々な恩恵を受けられます。

本記事では「ESG」について解説し、ESGに取り組む必要性やESGに取り組むことでどのような恩恵が受けられるのかを解説します。

ESGとは

ESGとは以下の3つの用語の頭文字を取った略語で、投資活動をはじめ経営や事業活動などを指す言葉です。

  • Environment:環境
  • Social:社会
  • Governance:ガバナンス(企業統治)

環境や社会に配慮しガバナンスが機能している優良企業がいわゆるESG企業であり、ESGを尊重した企業経営方針がESG経営です。そしてESG企業に投資を行うことをESG投資と言います。

ESGを連想させるキーワードとしてSDGsがありますが、SDGsが最終的な目標であるとするならば、ESGはSDGsを達成するための手段と言えます。

ESGはなぜ重要なのか?その必要性とは

昨今、世界中で地球温暖化が深刻な問題となり、地球温暖化にともなう災害や環境問題、水不足などさまざまなリスクに直面しています。

こうした中で、企業が長期的かつ継続的に成長していくためにはESGの3つの観点から企業を経営していく必要性があると言われています。主にESGが重要視される理由は以下が挙げられます。

  • 企業として環境の変化に対応していく必要性があるため
  • 自社の社会的評価向上が期待できるため
  • 長期目線から経営リスクを軽減できる

企業として環境の変化に対応していく必要性があるため

近年異常気象による災害や気候の変化などによるトラブルが頻発しており、企業として環境の変化に対応できる力が求められています。環境の変化に対応できる力は「変化対応力」と呼ばれ、目まぐるしく移り変わる環境の変化に強い耐性を持ちます。

この変化対応力がある企業や人材は、どのような環境に身を置かれてもパフォーマンスを落とさず、任務を遂行できます。企業が長期的かつ継続的に成長していくためには、こういったいつ降りかかるか分からない災害やトラブルにも冷静かつ柔軟に対応できる変化対応力が必要なのです。

自社の社会的評価向上が期待できるため

環境問題に取り組む企業は世間による社会的評価の向上が期待できます。SDGs達成などで環境問題改善が重要視されている中で、自ら進んで環境問題に取り組む企業は「社会的責任を果たしている」と評価されます。

いわゆるエシカルな活動として評価され、こういった評価は企業イメージの向上にもつながり、企業ブランディングの効果も期待できます。引いては従業員のモチベーションを高めることにもなり、同時にエンゲージメントの向上にもつながります。

長期目線から経営リスクを軽減できる

経営リスクの軽減においては、ESGの「G=ガバナンス(企業統治)」にしっかり取り組むことで企業内におけるさまざまなリスクを未然に防ぐことができます。

経営リスクの種類には経営戦略リスクや財務リスク、事故リスクなど様々なリスクがありますが、中でもとりわけ「コンプライアンスにおけるリスク」と「情報漏洩リスク」はガバナンスによりリスクの軽減は可能です。

ガバナンスを細かく設定し従業員の行動を制御することにより、コンプライアンスは守られ、企業内情報は守られます。ESGはこういった長期目線から、経営リスクを軽減できることにもつながります。

ESGと類似しているSDGsやCSRの違いとは

以下ではESGと類似しているSDGsやCSRとの違いについて解説します。

  • ESGとSDGsの違いとは
  • ESGとCSRの違いとは

ESGとSDGsの違いとは

上項目「ESGとは」でも解説している通り、ESGとは「環境(E)」「社会(S)」「ガバナンス(G)」の3つの用語の頭文字を取った略語で、投資活動をはじめ経営や事業活動などを指す言葉です。企業が安定して長期的かつ継続的に成長していくために重要な観点です。

一方SDGsはより良い世界目指すための行動指針となり、いわゆる最終目標のことを指します。つまりSDGsを達成するための手段がESGであり、多くの企業や経営者たちがさらにESGに力を入れて取り組むほど、SDGsの達成も早まることが期待できます。

ESGとCSRの違いとは

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略語で、日本語では「企業の社会的責任」となります。企業活動していく中で、ステークホルダー(利害関係者)に対して説明責任を果たすとともに、常に責任ある行動を取っていく考え方です。

一方ESGは、「環境(E)」「社会(S)」「ガバナンス(G)」の3つの観点から企業経営や投資などを行っていく考え方です。つまりCSRは企業の行動原則を示す言葉である一方、ESGは企業の取り組みや第三者による投資判断の基準を示す言葉となります。

ESG投資とは?投資の種類についても解説

以下ではESG投資について解説します。

  • ESG投資とは?
  • ESG投資の種類とは?

ESG投資とは?

ESG投資とは、ESG経営への取り組みがしっかりと行われている企業に投資をすることです。投資家が企業に対して株式投資を行う場合、通常キャッシュフローや利益率といった財務情報を確認して投資を行います。ですがESG投資では、こういった財務情報に加え「ESG」という非財務情報も加味して投資を行います。

いわゆる従来までのデイトレードと言われる短期的な利益を追求することへの反省を促し、持続可能な経済を実現させるべく長期目線から投資を行うことを想定した投資スタイル(投資手法)がESG投資なのです。

ESG投資の種類とは?

ESG投資には「GSIA=世界持続可能投資連合」が定めている7つの投資手法があります。それが以下となります。

  1. ネガティブ/除外 スクリーニング
  2. ポジティブ/ベストインクラス スクリーニング
  3. 国際規範に基づくスクリーニング
  4. ESGインテグレーション
  5. サスティナビリティ・テーマ投資型
  6. インパクト/コミュニティ投資
  7. 企業エンゲージメント

1.ネガティブ/除外 スクリーニング

「ネガティブ/除外 スクリーニング」はESGの観点から、問題のある企業を投資先対象から除外する手法です。例えば、タバコや酒類などを製造販売する企業はESGの観点から、社会に対してあまり良い影響を与えない企業と判断される可能性が高いと言えます。

2.ポジティブ/ベストインクラス スクリーニング

「ポジティブ/ベストインクラス スクリーニング」はESGの観点から、優良企業と判断される企業を投資先対象として選定する手法です。例えばSDGsやダイバーシティ促進に取り組んでいたり、再生可能エネルギーを積極的に利用していたりする企業などが、投資先対象として選定されやすくなります。

3.国際規範に基づくスクリーニング

「国際規範に基づくスクリーニング」はESGの観点から、ビジネスにおける国際規範の最低基準を満たしていない企業を除外する手法です。人権や労働、気候変動などの項目において、問題ありと判断された企業が除外の対象となります。

4.ESGインテグレーション

「ESGインテグレーション」は従来の投資判断基準となる財務情報に加えて、非財務情報であるESGの観点を加味した投資手法となります。

5.サスティナビリティ・テーマ投資型

「サスティナビリティ・テーマ投資型」は環境や経済等に配慮している企業、いわゆる再生可能エネルギーなどを積極的に利用している企業に対して投資する手法です。サスティナビリティは「Sustain=持続する」と「Ability=~する能力」をかけ合わせた造語で「持続可能性」という意味になります。

6.インパクト/コミュニティ投資

「インパクト/コミュニティ投資」は地域社会の活性化に力を入れている企業を対象にした投資手法です。地域に根ざした中小企業を経済的に支援することで、地域社会の開発と活性化を促進します。

7.企業エンゲージメント

「企業エンゲージメント」は投資家がESG方針を企業及び企業経営者に対して促すことで、議決権代理行為を行使します。直接企業の経営陣と対話の場を設け、ESGへの理解を深めてもらうことで投資対象とします。

ビジネスにおけるエンゲージメントは愛社精神や愛着心といった意味になりますが、ESG投資におけるエンゲージメントは投資家と経営者の対話を意味する言葉となります。

参考:Global Sustainable Investment Alliance 2018.p6

ESGがもたらす影響とは

以下ではESGのメリットやデメリット、リスクなどについて解説します。

  • ESGのメリット(ESG経営のメリット)
  • ESGのデメリット(ESG経営のデメリット)
  • ESGのリスク(ESG経営のリスク)

ESGのメリット(ESG経営のメリット)

企業がESGに取り組むメリットとして挙げられることは以下となります。

  • 経営リスクの軽減につながる
  • 企業ブランディング効果が期待できる
  • 優秀な人材確保が見込める
  • 投資家からの評価向上が期待できる

経営リスクの軽減につながる

昨今の目まぐるしい環境の変化とそれに伴う自然災害、度重なる法改正や規制などによる企業経営のリスクはどの企業にもつきまといます。企業はこれらのリスクを完全に排除することはできず、臨機応変かつ柔軟に乗り越えていく必要があります。

こういった問題に対しESGの観点を経営に取り入れることで、これらリスクの軽減つながることが期待できます。例えば、ESGの「E=環境」に取り組むことで、企業が変化対応力を身につけることができ、環境の変化に強い耐性を持てるようになります。

また、「G=ガバナンス(企業統治)」をしっかり機能させられる企業にすることで、ハラスメントや過労死などの発生リスクを抑えられると同時に、企業内で発生する様々なトラブルにも対応ができるようになります。

このようにESGの観点を取り入れることで経営リスクの軽減につながることが期待できます。

企業ブランディング効果が期待できる

ESG経営に取り組んでいる企業は、世間から企業の健全性が高いというイメージを持たれやすくなります。SDGsが叫ばれている昨今において、環境や社会の問題に積極的に取り組んでいる企業は透明性の高い企業と評価され、企業のブランド力向上効果も期待できます。

優秀な人材確保が見込める

企業ブランディングに成功し企業の程度知名度が高まると、自社で働きたいと思う人も増えてきます。すると優秀な人材確保が見込めるようになります。

優秀な人材が増えてくれば大きなビジネスへの挑戦もでき、さらなる利益や売上の増加も期待できます。引いては企業価値の向上にもつながります。

投資家からの評価向上が期待できる

昨今ESGを意識する投資家が増加傾向であることから、ESG経営に取り組む企業は投資家から注目されるようになります。

参考:Quick ESG投資比率「90%以上」の運用機関、5年後に過半に迫る ――ESG投資実態調査2023――

それだけ世の中が環境問題や社会問題、ルールなどを重んじる傾向であることが伺えます。こういった背景から、企業と投資家がESGを通して共通の目線で物事を考えることで、企業は投資家の協力を得られやすくなります。

ESGのデメリット(ESG経営のデメリット)

ESG経営にはメリットが多い一方、デメリットもあります。

  • 初期投資が必要な場合がある
  • 長期的な目線が必要

初期投資が必要な場合がある

ESG経営に取り組む場合、初期投資が必要になる場合もあります。例えば、従来まで使用していた設備を環境へ配慮した設備へと変更する必要性なども出てきます。

また再生可能エネルギーを利用するとなれば、コストが高くなることも考えられます。ある程度こういった初期投資を考える必要性があることが、デメリットの一つとなります。

長期的な目線が必要

ESG経営は短期間では効果が出にくいと言えます。地道な努力を続ける必要があり、少なくても数年単位の長期目線で戦略を立てる必要があります。費用回収までに時間を要することも視野に、資金のショートには十分注意して取り組まなくてはなりません。

ESGのリスク(ESG経営のリスク)

ESGに取り組むリスクは様々ありますが、とりわけ持続可能な森林管理に起因する原材料コストの増加などの可能性が常にあります。ESGに取り組むことで、こういったいつコストが増加するか分からないリスクが常に存在します。

また、炭素税規制による増税リスクもあります。例えば、温室効果ガスの抑制が難しい化学工業や鉄鋼業といった業種では、税収が負担となるリスクがあります。

ESGに対する国の取り組み

現在世界中で、SDGsを経営に取り入れることでESG投資を呼び込む動きが加速しており、こういった流れを受けて経済産業省ではSDGs経営推進イニシアティブを推し進めています。

この中において、企業等がSDGsを経営戦略に取り入れる取り組みを推進していくとしています。またその上で、企業がどのようにSDGsを経営に取り込んでいくか、投資家はESG観点から企業のそういった取り組みをどう評価するのか、等について議論を深めるとしています。

参考:経済産業省 ESGに関する経済産業省の取組.p12

ESGに対する企業の取り組み

すでに大手企業の一部において、ESG経営を取り入れているところもあります。以下ではESG経営を取り入れている企業を紹介します。

  • トヨタ自動車
  • Canon
  • 花王

トヨタ自動車

トヨタ自動車のESG基本方針は、すべての領域を通じて環境負荷を低減し、社会及び地球の持続可能な発展に貢献するとしています。ゼロへのチャレンジと題して「ライフサイクルCO2ゼロ」「新車CO2ゼロ」「工場CO2ゼロ」を目標に掲げています。

参考:TOYOTA  方針 | ESG(環境・社会・ガバナンス)に基づく取り組み

Canon

CanonではESGへの取り組みとして、ステークホルダーや地域、環境に対して良い関係を作り社会的責任をまっとうする宣言を行いました。Canonの持つ技術力で環境保護や保全活動で社会に貢献していくとしています。

参考:Canon ESGへの取り組み

花王

花王では2030年までの達成を目標とする「My Kirei Lifestyle」を掲げています。「顧客」「社会」「地球」を対象にアクションを起こすことで「花王のコミットメント」としています。顧客に対しては「QOL(Quality of life)=生活の質」の向上や安全かつ健康な製品の提供を約束しています。

そして社会に対しては「サステナブルなライフスタイルの推進」「責任ある原材料の調達」などをコミットメントとしています。また地球に対しては「脱炭素」「ごみゼロ」などを掲げています。

花王とEGSコミットメントとアクション


参考:花王 花王のESG戦略-Kirei Lifestyle Plan

まとめ

本記事ではESGについて解説しました。いち早くESGに取り組むことが、これから企業が長期目線で経営を持続していけるか否かの分かれ道となり得ます。

そしてESGの観点を重要視した投資家も増え続けていることから、企業がESGに取り組むことで投資家からの支援も得られやすくなります。

このような背景から、国や企業によるESGへの取り組みは今後も拡大していくと言えます。

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ESGとは?SDGs・CSRとの違いや投資の種類まで簡単に解説

ESGとは?SDGs・CSRとの違いや投資の種類まで簡単に解説

昨今SDGsとともによく耳にすることがあるESGですが、これからの企業経営においてこの「ESG」はSDGs同様に必要不可欠な観点となります。自然災害が多発するようになり、環境問題がシビアになっていく中で、ESGに取り組む企業は様々な恩恵を受けられます。

本記事では「ESG」について解説し、ESGに取り組む必要性やESGに取り組むことでどのような恩恵が受けられるのかを解説します。

ESGとは

ESGとは以下の3つの用語の頭文字を取った略語で、投資活動をはじめ経営や事業活動などを指す言葉です。

  • Environment:環境
  • Social:社会
  • Governance:ガバナンス(企業統治)

環境や社会に配慮しガバナンスが機能している優良企業がいわゆるESG企業であり、ESGを尊重した企業経営方針がESG経営です。そしてESG企業に投資を行うことをESG投資と言います。

ESGを連想させるキーワードとしてSDGsがありますが、SDGsが最終的な目標であるとするならば、ESGはSDGsを達成するための手段と言えます。

ESGはなぜ重要なのか?その必要性とは

昨今、世界中で地球温暖化が深刻な問題となり、地球温暖化にともなう災害や環境問題、水不足などさまざまなリスクに直面しています。

こうした中で、企業が長期的かつ継続的に成長していくためにはESGの3つの観点から企業を経営していく必要性があると言われています。主にESGが重要視される理由は以下が挙げられます。

  • 企業として環境の変化に対応していく必要性があるため
  • 自社の社会的評価向上が期待できるため
  • 長期目線から経営リスクを軽減できる

企業として環境の変化に対応していく必要性があるため

近年異常気象による災害や気候の変化などによるトラブルが頻発しており、企業として環境の変化に対応できる力が求められています。環境の変化に対応できる力は「変化対応力」と呼ばれ、目まぐるしく移り変わる環境の変化に強い耐性を持ちます。

この変化対応力がある企業や人材は、どのような環境に身を置かれてもパフォーマンスを落とさず、任務を遂行できます。企業が長期的かつ継続的に成長していくためには、こういったいつ降りかかるか分からない災害やトラブルにも冷静かつ柔軟に対応できる変化対応力が必要なのです。

自社の社会的評価向上が期待できるため

環境問題に取り組む企業は世間による社会的評価の向上が期待できます。SDGs達成などで環境問題改善が重要視されている中で、自ら進んで環境問題に取り組む企業は「社会的責任を果たしている」と評価されます。

いわゆるエシカルな活動として評価され、こういった評価は企業イメージの向上にもつながり、企業ブランディングの効果も期待できます。引いては従業員のモチベーションを高めることにもなり、同時にエンゲージメントの向上にもつながります。

長期目線から経営リスクを軽減できる

経営リスクの軽減においては、ESGの「G=ガバナンス(企業統治)」にしっかり取り組むことで企業内におけるさまざまなリスクを未然に防ぐことができます。

経営リスクの種類には経営戦略リスクや財務リスク、事故リスクなど様々なリスクがありますが、中でもとりわけ「コンプライアンスにおけるリスク」と「情報漏洩リスク」はガバナンスによりリスクの軽減は可能です。

ガバナンスを細かく設定し従業員の行動を制御することにより、コンプライアンスは守られ、企業内情報は守られます。ESGはこういった長期目線から、経営リスクを軽減できることにもつながります。

ESGと類似しているSDGsやCSRの違いとは

以下ではESGと類似しているSDGsやCSRとの違いについて解説します。

  • ESGとSDGsの違いとは
  • ESGとCSRの違いとは

ESGとSDGsの違いとは

上項目「ESGとは」でも解説している通り、ESGとは「環境(E)」「社会(S)」「ガバナンス(G)」の3つの用語の頭文字を取った略語で、投資活動をはじめ経営や事業活動などを指す言葉です。企業が安定して長期的かつ継続的に成長していくために重要な観点です。

一方SDGsはより良い世界目指すための行動指針となり、いわゆる最終目標のことを指します。つまりSDGsを達成するための手段がESGであり、多くの企業や経営者たちがさらにESGに力を入れて取り組むほど、SDGsの達成も早まることが期待できます。

ESGとCSRの違いとは

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略語で、日本語では「企業の社会的責任」となります。企業活動していく中で、ステークホルダー(利害関係者)に対して説明責任を果たすとともに、常に責任ある行動を取っていく考え方です。

一方ESGは、「環境(E)」「社会(S)」「ガバナンス(G)」の3つの観点から企業経営や投資などを行っていく考え方です。つまりCSRは企業の行動原則を示す言葉である一方、ESGは企業の取り組みや第三者による投資判断の基準を示す言葉となります。

ESG投資とは?投資の種類についても解説

以下ではESG投資について解説します。

  • ESG投資とは?
  • ESG投資の種類とは?

ESG投資とは?

ESG投資とは、ESG経営への取り組みがしっかりと行われている企業に投資をすることです。投資家が企業に対して株式投資を行う場合、通常キャッシュフローや利益率といった財務情報を確認して投資を行います。ですがESG投資では、こういった財務情報に加え「ESG」という非財務情報も加味して投資を行います。

いわゆる従来までのデイトレードと言われる短期的な利益を追求することへの反省を促し、持続可能な経済を実現させるべく長期目線から投資を行うことを想定した投資スタイル(投資手法)がESG投資なのです。

ESG投資の種類とは?

ESG投資には「GSIA=世界持続可能投資連合」が定めている7つの投資手法があります。それが以下となります。

  1. ネガティブ/除外 スクリーニング
  2. ポジティブ/ベストインクラス スクリーニング
  3. 国際規範に基づくスクリーニング
  4. ESGインテグレーション
  5. サスティナビリティ・テーマ投資型
  6. インパクト/コミュニティ投資
  7. 企業エンゲージメント

1.ネガティブ/除外 スクリーニング

「ネガティブ/除外 スクリーニング」はESGの観点から、問題のある企業を投資先対象から除外する手法です。例えば、タバコや酒類などを製造販売する企業はESGの観点から、社会に対してあまり良い影響を与えない企業と判断される可能性が高いと言えます。

2.ポジティブ/ベストインクラス スクリーニング

「ポジティブ/ベストインクラス スクリーニング」はESGの観点から、優良企業と判断される企業を投資先対象として選定する手法です。例えばSDGsやダイバーシティ促進に取り組んでいたり、再生可能エネルギーを積極的に利用していたりする企業などが、投資先対象として選定されやすくなります。

3.国際規範に基づくスクリーニング

「国際規範に基づくスクリーニング」はESGの観点から、ビジネスにおける国際規範の最低基準を満たしていない企業を除外する手法です。人権や労働、気候変動などの項目において、問題ありと判断された企業が除外の対象となります。

4.ESGインテグレーション

「ESGインテグレーション」は従来の投資判断基準となる財務情報に加えて、非財務情報であるESGの観点を加味した投資手法となります。

5.サスティナビリティ・テーマ投資型

「サスティナビリティ・テーマ投資型」は環境や経済等に配慮している企業、いわゆる再生可能エネルギーなどを積極的に利用している企業に対して投資する手法です。サスティナビリティは「Sustain=持続する」と「Ability=~する能力」をかけ合わせた造語で「持続可能性」という意味になります。

6.インパクト/コミュニティ投資

「インパクト/コミュニティ投資」は地域社会の活性化に力を入れている企業を対象にした投資手法です。地域に根ざした中小企業を経済的に支援することで、地域社会の開発と活性化を促進します。

7.企業エンゲージメント

「企業エンゲージメント」は投資家がESG方針を企業及び企業経営者に対して促すことで、議決権代理行為を行使します。直接企業の経営陣と対話の場を設け、ESGへの理解を深めてもらうことで投資対象とします。

ビジネスにおけるエンゲージメントは愛社精神や愛着心といった意味になりますが、ESG投資におけるエンゲージメントは投資家と経営者の対話を意味する言葉となります。

参考:Global Sustainable Investment Alliance 2018.p6

ESGがもたらす影響とは

以下ではESGのメリットやデメリット、リスクなどについて解説します。

  • ESGのメリット(ESG経営のメリット)
  • ESGのデメリット(ESG経営のデメリット)
  • ESGのリスク(ESG経営のリスク)

ESGのメリット(ESG経営のメリット)

企業がESGに取り組むメリットとして挙げられることは以下となります。

  • 経営リスクの軽減につながる
  • 企業ブランディング効果が期待できる
  • 優秀な人材確保が見込める
  • 投資家からの評価向上が期待できる

経営リスクの軽減につながる

昨今の目まぐるしい環境の変化とそれに伴う自然災害、度重なる法改正や規制などによる企業経営のリスクはどの企業にもつきまといます。企業はこれらのリスクを完全に排除することはできず、臨機応変かつ柔軟に乗り越えていく必要があります。

こういった問題に対しESGの観点を経営に取り入れることで、これらリスクの軽減つながることが期待できます。例えば、ESGの「E=環境」に取り組むことで、企業が変化対応力を身につけることができ、環境の変化に強い耐性を持てるようになります。

また、「G=ガバナンス(企業統治)」をしっかり機能させられる企業にすることで、ハラスメントや過労死などの発生リスクを抑えられると同時に、企業内で発生する様々なトラブルにも対応ができるようになります。

このようにESGの観点を取り入れることで経営リスクの軽減につながることが期待できます。

企業ブランディング効果が期待できる

ESG経営に取り組んでいる企業は、世間から企業の健全性が高いというイメージを持たれやすくなります。SDGsが叫ばれている昨今において、環境や社会の問題に積極的に取り組んでいる企業は透明性の高い企業と評価され、企業のブランド力向上効果も期待できます。

優秀な人材確保が見込める

企業ブランディングに成功し企業の程度知名度が高まると、自社で働きたいと思う人も増えてきます。すると優秀な人材確保が見込めるようになります。

優秀な人材が増えてくれば大きなビジネスへの挑戦もでき、さらなる利益や売上の増加も期待できます。引いては企業価値の向上にもつながります。

投資家からの評価向上が期待できる

昨今ESGを意識する投資家が増加傾向であることから、ESG経営に取り組む企業は投資家から注目されるようになります。

参考:Quick ESG投資比率「90%以上」の運用機関、5年後に過半に迫る ――ESG投資実態調査2023――

それだけ世の中が環境問題や社会問題、ルールなどを重んじる傾向であることが伺えます。こういった背景から、企業と投資家がESGを通して共通の目線で物事を考えることで、企業は投資家の協力を得られやすくなります。

ESGのデメリット(ESG経営のデメリット)

ESG経営にはメリットが多い一方、デメリットもあります。

  • 初期投資が必要な場合がある
  • 長期的な目線が必要

初期投資が必要な場合がある

ESG経営に取り組む場合、初期投資が必要になる場合もあります。例えば、従来まで使用していた設備を環境へ配慮した設備へと変更する必要性なども出てきます。

また再生可能エネルギーを利用するとなれば、コストが高くなることも考えられます。ある程度こういった初期投資を考える必要性があることが、デメリットの一つとなります。

長期的な目線が必要

ESG経営は短期間では効果が出にくいと言えます。地道な努力を続ける必要があり、少なくても数年単位の長期目線で戦略を立てる必要があります。費用回収までに時間を要することも視野に、資金のショートには十分注意して取り組まなくてはなりません。

ESGのリスク(ESG経営のリスク)

ESGに取り組むリスクは様々ありますが、とりわけ持続可能な森林管理に起因する原材料コストの増加などの可能性が常にあります。ESGに取り組むことで、こういったいつコストが増加するか分からないリスクが常に存在します。

また、炭素税規制による増税リスクもあります。例えば、温室効果ガスの抑制が難しい化学工業や鉄鋼業といった業種では、税収が負担となるリスクがあります。

ESGに対する国の取り組み

現在世界中で、SDGsを経営に取り入れることでESG投資を呼び込む動きが加速しており、こういった流れを受けて経済産業省ではSDGs経営推進イニシアティブを推し進めています。

この中において、企業等がSDGsを経営戦略に取り入れる取り組みを推進していくとしています。またその上で、企業がどのようにSDGsを経営に取り込んでいくか、投資家はESG観点から企業のそういった取り組みをどう評価するのか、等について議論を深めるとしています。

参考:経済産業省 ESGに関する経済産業省の取組.p12

ESGに対する企業の取り組み

すでに大手企業の一部において、ESG経営を取り入れているところもあります。以下ではESG経営を取り入れている企業を紹介します。

  • トヨタ自動車
  • Canon
  • 花王

トヨタ自動車

トヨタ自動車のESG基本方針は、すべての領域を通じて環境負荷を低減し、社会及び地球の持続可能な発展に貢献するとしています。ゼロへのチャレンジと題して「ライフサイクルCO2ゼロ」「新車CO2ゼロ」「工場CO2ゼロ」を目標に掲げています。

参考:TOYOTA  方針 | ESG(環境・社会・ガバナンス)に基づく取り組み

Canon

CanonではESGへの取り組みとして、ステークホルダーや地域、環境に対して良い関係を作り社会的責任をまっとうする宣言を行いました。Canonの持つ技術力で環境保護や保全活動で社会に貢献していくとしています。

参考:Canon ESGへの取り組み

花王

花王では2030年までの達成を目標とする「My Kirei Lifestyle」を掲げています。「顧客」「社会」「地球」を対象にアクションを起こすことで「花王のコミットメント」としています。顧客に対しては「QOL(Quality of life)=生活の質」の向上や安全かつ健康な製品の提供を約束しています。

そして社会に対しては「サステナブルなライフスタイルの推進」「責任ある原材料の調達」などをコミットメントとしています。また地球に対しては「脱炭素」「ごみゼロ」などを掲げています。

花王とEGSコミットメントとアクション


参考:花王 花王のESG戦略-Kirei Lifestyle Plan

まとめ

本記事ではESGについて解説しました。いち早くESGに取り組むことが、これから企業が長期目線で経営を持続していけるか否かの分かれ道となり得ます。

そしてESGの観点を重要視した投資家も増え続けていることから、企業がESGに取り組むことで投資家からの支援も得られやすくなります。

このような背景から、国や企業によるESGへの取り組みは今後も拡大していくと言えます。

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