クリーンテクノロジーとは?エネルギー問題解決に向けて特徴や種類を解説
環境に負荷がかからない技術や再生可能な資源を活用する技術、製品、サービスのことをクリーンテクノロジー(クリーンテック)と言います。
パリ協定採択以降は特に、脱炭素社会やカーボンニュートラル実現に関わるクリーンテクノロジーへの注目が高まっている状況です。
しかしクリーンテクノロジーと言われても「何を指しているのか」と疑問に思われる方もいるかもしれません。
そこで本記事ではクリーンテクノロジーとは何かについて、特徴や種類などを解説します。
目次
クリーンテクノロジーは、持続可能な社会の実現に欠かせない技術
クリーンテクノロジーとは、環境に負荷をかけずにエネルギーを抽出したり、環境を浄化したりする技術のことを指します。
クリーンテック(cleantech)と省略した形で使われることも多いです。
具体的には太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギーや省エネルギー技術、廃棄物を減らすプロセスに寄与する技術、化石燃料に頼らない電気自動車などが挙げられます。
クリーンテクノロジーは持続可能な社会を目指す上で欠かせない技術です。
クリーンテクノロジーとクライメートテック、グリーンテクノロジーの違い
クリーンテクノロジーのほかに、クライメートテック、グリーンテクノロジーという言葉が使われることもあります。
クライメートテックとの違いは、気候変動や脱炭素に焦点を当てているかどうかにありますが、多くの場合クライメートテックはクリーンテクノロジーの一部と考えられています。
グリーン(Green)テクノロジーとの違いは、グリーンテクノロジーが規制当局によって推進されてきたのに対して、クリーン(Clean)テクノロジーは主に市場経済において使用されてきた点にあります。
クリーンテクノロジーを牽引してきたベンチャーキャピタル「クリーンテックグループ」の創始者によると、クリーンテクノロジーは投資家や顧客に収益を提供する新技術やビジネスモデルと定義されています。
とはいえクリーンテクノロジーもグリーンテクノロジーも例示される技術はほぼ同じで、持続可能な社会の実現に貢献する技術を指しています。
エネルギー分野などクリーンテクノロジーの種類は多岐に渡る
クリーンテクノロジーという言葉が使われ始めた2000年ごろは、太陽光や風力、水力発電などのエネルギー問題を解決するための技術を指していました。
しかし近年では、エネルギー分野だけでなく、農業や素材、資源循環に関わるさまざまな技術を含むようになってきています。
前述のベンチャーキャピタル「クリーンテックグループ」は、クリーンテクノロジーの有望企業トップ100を選び「グローバルクリーンテック100」として毎年公表しています。
2024年に選ばれたクリーンテクノロジーは、エネルギー、電力、交通、サプライチェーン、廃棄物管理、化学薬品、環境モニタリング、代替タンパク質など多岐に渡っていました。
第一次、第二次クリーンテクノロジーブームの違い
クリーンテクノロジーへの投資として、2010年前後に第一次クリーンテックブームが起こったとされています。
2015年のパリ協定採択後の近年は、第二次クリーンテックブームが起こっているとも言われています。
それぞれの違いについて以下で詳しく説明します。
2010年前後の米国中心の、第一次クリーンテクノロジーブーム
第一次クリーンテックブームが起こったのは2010年前後のアメリカでした。
シリコンバレーを中心に、再生可能エネルギー分野のクリーンテクノロジーを開発するスタートアップ企業への投資が盛り上がったのです。
いっときは17億円以上のベンチャーキャピタルからの投資がありましたが、2011年以降は急速に投資額を減らしました。
これは、リーマンショック以降株価の急落や石油や天然ガスの価格下落、スタートアップ企業の閉業が原因と言われています。
またクリーンテクノロジー分野では短期的なリターンが期待できない点、リスクが高い点が、ベンチャーキャピタルに合わなかったとの指摘もあります。
クリーンテックブーム時の投資額推移
参考:GXスタートアップの創出・成長に向けたガイダンス〜初期需要確保とファイナンスの多様化〜|経済産業省
2015年パリ協定以降の、第二次クリーンテクノロジーブーム
パリ協定の採択以降、世界各国でクリーンテクノロジーへの関心が急速に高まりました。
クリーンテクノロジーへの投資額も増えており、第二次クリーンテックブームとも言われています。
しかし第一次クリーンテックブームと大きく異なる点は、以下の3点です。
- 世界各国の政府や機関投資家、大手企業もクリーンテクノロジーの普及に興味を示している点
- 再生可能エネルギーだけでなく、自動車や食、リサイクルなどさまざまな領域のクリーンテクノロジーが注目されている点
- 政府の予算規模も大きく、大手企業もサステナブル経営への理解を深めている点
国際エネルギー機関(IEA)は、ネットゼロ実現のためには2050年までに毎年4兆ドルの投資が必要という見通しを表明しており、昨今のクリーンテクノロジーへの注目は一時的なブームでは終わらない可能性が高いと言えます。
必要投資額(IEA Net zero Scenario)
参考:GXスタートアップの創出・成長に向けたガイダンス〜初期需要確保とファイナンスの多様化〜|経済産業省
※Low emission fuels:低エミッション燃料
Electricity gerneration:発電
Energy Infrastructure:エネルギーインフラ
End use:最終消費部門
クリーンテクノロジーをめぐる国内外のさまざまな動き
クリーンテクノロジー普及のためには、長期的な投資や政府からの補助、スタートアップの育成などが大切です。
以下ではクリーンテクノロジーをめぐる国内外の動きを紹介します。
クリーンテクノロジーへの投資や環境整備が進む世界の動き
2023年に行われたクリーンエネルギー投資の国別順位では1位が中国で6,759億ドル、2位がアメリカの3,031億ドル、3位はドイツの954億ドルでした。
なお、日本は320億ドルで8位でした。
世界最大のCO2排出国である中国は、2023年のクリーンエネルギーへの投資額が最も多く、特に再生可能エネルギーと電気自動車分野の発展が目覚ましいです。
アメリカは、前述の「グローバルクリーンテック100」で65社が選出されています。
特にイノベーションの分野でアメリカが果たしている役割は大きいです。
アジア地域では、シンガポールの動きがめざましく、政府主導でクリーンテクノロジー関連のスタートアップ育成やグリーンファイナンスの整備を積極的に行っています。
2020年のエネルギー投資額上位10か国
日本の脱炭素社会実現に向けて必要なクリーンテクノロジーとは
日本はクリーンテクノロジーのスタートアップに関しては、数と規模においておくれをとっており、国際的な競争力をもつクリーンテクノロジー企業の創出や育成に向けた取り組みが求められます。
そうしたなか、2024年5月に資源エネルギー庁は「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略2024」を策定しました。
これは脱炭素社会に向けて必要とされるクリーンテクノロジーを列挙したもので、エネルギー転換や産業・家庭・業務・運輸の各部門で必要とされる技術が具体的に示されています。
今後クリーンテクノロジーのイノベーションや実用化に向けた取り組みが進むことが期待されます。
「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略2024」の重要技術
参考:「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略2024」|経済産業省
持続可能な社会を実現するクリーンテクノロジーの普及に向けて
クリーンテクノロジーとは、環境に負荷をかけずにエネルギーを抽出したり、環境を浄化したりする技術のことです。
エネルギー問題解決はもちろんのこと、持続可能な社会を実現するために必要なさまざまな分野の技術を指しており、世界各国で研究や開発、商用化が進んでいます。
日本においてはクリーンテクノロジー分野でのスタートアップの創出や育成を支援する環境整備が遅れている状況です。
クリーンテクノロジーをビジネスチャンスに変えていくための、長期的な視点での支援や環境整備が求められています。
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クリーンテクノロジーとは?エネルギー問題解決に向けて特徴や種類を解説
環境に負荷がかからない技術や再生可能な資源を活用する技術、製品、サービスのことをクリーンテクノロジー(クリーンテック)と言います。
パリ協定採択以降は特に、脱炭素社会やカーボンニュートラル実現に関わるクリーンテクノロジーへの注目が高まっている状況です。
しかしクリーンテクノロジーと言われても「何を指しているのか」と疑問に思われる方もいるかもしれません。
そこで本記事ではクリーンテクノロジーとは何かについて、特徴や種類などを解説します。
目次
クリーンテクノロジーは、持続可能な社会の実現に欠かせない技術
クリーンテクノロジーとは、環境に負荷をかけずにエネルギーを抽出したり、環境を浄化したりする技術のことを指します。
クリーンテック(cleantech)と省略した形で使われることも多いです。
具体的には太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギーや省エネルギー技術、廃棄物を減らすプロセスに寄与する技術、化石燃料に頼らない電気自動車などが挙げられます。
クリーンテクノロジーは持続可能な社会を目指す上で欠かせない技術です。
クリーンテクノロジーとクライメートテック、グリーンテクノロジーの違い
クリーンテクノロジーのほかに、クライメートテック、グリーンテクノロジーという言葉が使われることもあります。
クライメートテックとの違いは、気候変動や脱炭素に焦点を当てているかどうかにありますが、多くの場合クライメートテックはクリーンテクノロジーの一部と考えられています。
グリーン(Green)テクノロジーとの違いは、グリーンテクノロジーが規制当局によって推進されてきたのに対して、クリーン(Clean)テクノロジーは主に市場経済において使用されてきた点にあります。
クリーンテクノロジーを牽引してきたベンチャーキャピタル「クリーンテックグループ」の創始者によると、クリーンテクノロジーは投資家や顧客に収益を提供する新技術やビジネスモデルと定義されています。
とはいえクリーンテクノロジーもグリーンテクノロジーも例示される技術はほぼ同じで、持続可能な社会の実現に貢献する技術を指しています。
エネルギー分野などクリーンテクノロジーの種類は多岐に渡る
クリーンテクノロジーという言葉が使われ始めた2000年ごろは、太陽光や風力、水力発電などのエネルギー問題を解決するための技術を指していました。
しかし近年では、エネルギー分野だけでなく、農業や素材、資源循環に関わるさまざまな技術を含むようになってきています。
前述のベンチャーキャピタル「クリーンテックグループ」は、クリーンテクノロジーの有望企業トップ100を選び「グローバルクリーンテック100」として毎年公表しています。
2024年に選ばれたクリーンテクノロジーは、エネルギー、電力、交通、サプライチェーン、廃棄物管理、化学薬品、環境モニタリング、代替タンパク質など多岐に渡っていました。
第一次、第二次クリーンテクノロジーブームの違い
クリーンテクノロジーへの投資として、2010年前後に第一次クリーンテックブームが起こったとされています。
2015年のパリ協定採択後の近年は、第二次クリーンテックブームが起こっているとも言われています。
それぞれの違いについて以下で詳しく説明します。
2010年前後の米国中心の、第一次クリーンテクノロジーブーム
第一次クリーンテックブームが起こったのは2010年前後のアメリカでした。
シリコンバレーを中心に、再生可能エネルギー分野のクリーンテクノロジーを開発するスタートアップ企業への投資が盛り上がったのです。
いっときは17億円以上のベンチャーキャピタルからの投資がありましたが、2011年以降は急速に投資額を減らしました。
これは、リーマンショック以降株価の急落や石油や天然ガスの価格下落、スタートアップ企業の閉業が原因と言われています。
またクリーンテクノロジー分野では短期的なリターンが期待できない点、リスクが高い点が、ベンチャーキャピタルに合わなかったとの指摘もあります。
クリーンテックブーム時の投資額推移
参考:GXスタートアップの創出・成長に向けたガイダンス〜初期需要確保とファイナンスの多様化〜|経済産業省
2015年パリ協定以降の、第二次クリーンテクノロジーブーム
パリ協定の採択以降、世界各国でクリーンテクノロジーへの関心が急速に高まりました。
クリーンテクノロジーへの投資額も増えており、第二次クリーンテックブームとも言われています。
しかし第一次クリーンテックブームと大きく異なる点は、以下の3点です。
- 世界各国の政府や機関投資家、大手企業もクリーンテクノロジーの普及に興味を示している点
- 再生可能エネルギーだけでなく、自動車や食、リサイクルなどさまざまな領域のクリーンテクノロジーが注目されている点
- 政府の予算規模も大きく、大手企業もサステナブル経営への理解を深めている点
国際エネルギー機関(IEA)は、ネットゼロ実現のためには2050年までに毎年4兆ドルの投資が必要という見通しを表明しており、昨今のクリーンテクノロジーへの注目は一時的なブームでは終わらない可能性が高いと言えます。
必要投資額(IEA Net zero Scenario)
参考:GXスタートアップの創出・成長に向けたガイダンス〜初期需要確保とファイナンスの多様化〜|経済産業省
※Low emission fuels:低エミッション燃料
Electricity gerneration:発電
Energy Infrastructure:エネルギーインフラ
End use:最終消費部門
クリーンテクノロジーをめぐる国内外のさまざまな動き
クリーンテクノロジー普及のためには、長期的な投資や政府からの補助、スタートアップの育成などが大切です。
以下ではクリーンテクノロジーをめぐる国内外の動きを紹介します。
クリーンテクノロジーへの投資や環境整備が進む世界の動き
2023年に行われたクリーンエネルギー投資の国別順位では1位が中国で6,759億ドル、2位がアメリカの3,031億ドル、3位はドイツの954億ドルでした。
なお、日本は320億ドルで8位でした。
世界最大のCO2排出国である中国は、2023年のクリーンエネルギーへの投資額が最も多く、特に再生可能エネルギーと電気自動車分野の発展が目覚ましいです。
アメリカは、前述の「グローバルクリーンテック100」で65社が選出されています。
特にイノベーションの分野でアメリカが果たしている役割は大きいです。
アジア地域では、シンガポールの動きがめざましく、政府主導でクリーンテクノロジー関連のスタートアップ育成やグリーンファイナンスの整備を積極的に行っています。
2020年のエネルギー投資額上位10か国
日本の脱炭素社会実現に向けて必要なクリーンテクノロジーとは
日本はクリーンテクノロジーのスタートアップに関しては、数と規模においておくれをとっており、国際的な競争力をもつクリーンテクノロジー企業の創出や育成に向けた取り組みが求められます。
そうしたなか、2024年5月に資源エネルギー庁は「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略2024」を策定しました。
これは脱炭素社会に向けて必要とされるクリーンテクノロジーを列挙したもので、エネルギー転換や産業・家庭・業務・運輸の各部門で必要とされる技術が具体的に示されています。
今後クリーンテクノロジーのイノベーションや実用化に向けた取り組みが進むことが期待されます。
「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略2024」の重要技術
参考:「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略2024」|経済産業省
持続可能な社会を実現するクリーンテクノロジーの普及に向けて
クリーンテクノロジーとは、環境に負荷をかけずにエネルギーを抽出したり、環境を浄化したりする技術のことです。
エネルギー問題解決はもちろんのこと、持続可能な社会を実現するために必要なさまざまな分野の技術を指しており、世界各国で研究や開発、商用化が進んでいます。
日本においてはクリーンテクノロジー分野でのスタートアップの創出や育成を支援する環境整備が遅れている状況です。
クリーンテクノロジーをビジネスチャンスに変えていくための、長期的な視点での支援や環境整備が求められています。